この2つの事業は、シャープが新たな事業ドメインとして設定したスマートホーム、スマートビジネスソリューション、アドバンスディスプレイシステム、IoTエレクトロデバイスの4つの事業を横断する形で推進することになる。
そのため、全社に横串を刺すことを目的に、AIoT戦略推進室、8Kエコシステム戦略推進室をそれぞれ設置して、One SHARPとしての事業推進を図る。
注目しておきたいのが、この2つの戦略推進室の人事だ。
AIoT戦略推進室の室長には、社外取締役を務めていた元ソニーの石田佳久氏、そして、8Kエコシステム戦略推進室の室長には、元NHKの西山博一氏をそれぞれ起用する。
「石田氏は、ソニー時代には、テレビを担当していたが、それ以前にはパソコンのVAIOやソニーモバイルを担当していた。テレビは仕方なくやった。この分野は専門である。また、西山氏は、NHK出身。5月25日~28日まで、NHKと一緒に、大相撲夏場所の8Kスーパーハイビジョンパブリックビューイングを東京で開催した。2018年にはNHKが8Kの実用放送をスタートする。8Kでは、テレビだけでなく、カメラも作りたいと考えている」などとし、それぞれの分野の専門家を登用した人事に自信をみせる。
ちなみに、経営層の人事では、2015年には取締役が15人、執行役員が24人いた体制を、取締役が9人、執行役員を12人に削減。シャーププロパーの取締役は、財務担当の野村勝明氏だけになる。その野村氏も、一度はシャープを出て、鴻海が出資したSDPで会長を務めてきた経験者。鴻海傘下での中期経営計画は、シャープの血を薄めて推進することになる。
一方で、4つの事業ドメインを細かく見てみると、この中期経営計画のゴール設定が意欲的であることがわかる。
たとえば、スマートホームは、2016年度実績では5506億円だった売上高を、2019年度には1兆円以上へと倍増する計画を打ち出している。また、IoTエレクトロデバイスは、2016年度実績の4136億円を、2019年度には8000億円以上に拡大。やはり倍増を目指す計画だ。2016年度実績の8420億円を、2019年度には1兆円以上に拡大するアドバンスディスプレイシステムとともに、1兆円規模の柱を3本創出する考えだ。そこに、収益性の高いスマートビジネスソリューションを、2016年度の実績の3177億円から、2019年度には4500億円以上と着実に成長させるというシナリオだ。