6月14~18日の日程で、今年も「ル・マン24時間レース」がフランスのル・マン市で開催される。1923年に第1回が開催されたこのレースは、世界三大24時間レースと呼ばれるベルギーのスパ24時間、米国のデイトナ24時間と共に長い歴史を持つ耐久レースだ。中でも、ル・マンは最も古い歴史を誇る。そして第85回(1940~1948年の間は第二次世界大戦の影響で中止)を迎える今年も、トヨタ自動車はハイブリッドシステムを搭載するレーシングカーで参戦し、初優勝を目指す。その参戦の意図を探る。

2016年のル・マン。トヨタは1台が優勝目前で失格、もう1台は2位表彰台という結果だった

ル・マン制覇は一流ブランドの証

過去、ル・マン24時間レースには名だたる自動車メーカーが出場し、優勝を飾ってきた。ベントレー、アルファロメオ、ブガッティ、ジャガー、メルセデス・ベンツ、フェラーリ、アストンマーチン、フォード、ポルシェ、ルノー、プジョー、BMW、アウディなど、枚挙にいとまがない。

日本からも、トヨタ、日産自動車、ホンダ、マツダなどが出場してきたが、そのうち優勝したのはマツダだけだ。世界の自動車メーカーが栄冠をつかんできたル・マンの歴史に、勝者として名を刻むことはトヨタの悲願である。

自動車レースには他に「フォーミュラ1(F1)」もあって、日本ではホンダの活躍などにより、こちらのほうがなじみは深いかもしれない。しかし、本来の姿からすると、F1はドライバー選手権に重きが置かれ、自動車メーカーはドライバーを支援したことへの称賛を受けることになる一方、ル・マン24時間レースなどの耐久レースは自動車製造の戦いであり、こちらのほうが自動車メーカーにとっては栄誉となるのである。

ル・マン24時間レースが始まった頃は、エンジンやタイヤの性能はもちろん、ヘッドライトやワイパーなどの装備もまだ十分ではなく、クルマのあらゆる機能や装備が24時間走り続けることで鍛えられ、発展してきた。

また、ドライバーより自動車メーカーの技術競争に重きが置かれているため、参加するレーシングカーにも幅があり、数年前には同じハイブリッド車(HV)といっても、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが戦うことすらあった。一方のF1は、ドライバーが腕を競うレースであるため、レーシングカーの技術にメーカーごとの多彩さはない。

まさに時代を反映し、次世代の技術を磨くことに重きが置かれるのが、ル・マン24時間レースなのである。

耐久レースではメーカーの技術力が試される(画像は2016年のル・マン)

電動化技術が進歩、HVでレースに参戦する意味とは

しかし、かつてより時代は早く展開し、今日の自動車市場において、HVはもはや当たり前の存在となった。これから注目され、発展が期待されるのはプラグインハイブリッド車(PHV)であり、電気自動車(EV)である。

自動車メーカーとして、ハイブリッドレーシングカーでル・マンに参加する意義は何か。名だたるメーカーと共に勝者として歴史に名を刻む以外に、どういう狙いがあるのだろうか。