平行線両社の行方が東芝の未来を握る
東芝とウエスタンデジタルの意見は平行線のままだ。
綱川社長は、ウエスタンデジタルのスティーブ・ミリガンCEOと面談したが、その内容については、「決裂したわけではない。先方も話し合いを続けていくという姿勢である。また会える時期があると思う。なるべく早い時期にあって話し合いをしたい」と語るが、ウエスタンデジタルが打った一手は、その結論が出るまでに時間を要する事柄でもあり、東芝にとっては再建計画に大きなダメージを及ぼす可能性がある。
ひとつは、入札候補会社への影響だ。
ウエスタンデジタルが「横槍」を入れたことで、他の入札候補会社が懸念の色を見せ始めているのも事実だ。
また、5月19日に設定されている二次入札の期限への影響も気になる。
綱川社長は、「二次入札の期限には変更はない」、「入札候補者には、東芝の主張の正当性を説明して、懸念を払拭するように対応する」と述べ、これまでとは変わらないことを強調してみせるが、入札候補会社は情報収集に追われているのは必至だ。
そして、入札の遅れやそれに伴う売却交渉の遅れにつながるようだと、東芝にとっては、まさに死活問題につながる。
東芝が、このほど発表した監査法人の「お墨付き」を得ていない2016年度業績見通しでは、当期純利益は4900億円減の9500億円の大幅な赤字。電機業界では過去最悪、東電に次いで史上2番目という最終赤字の規模だ。
これにより、株主資本はマイナス5400億円と、債務超過に陥ることになる。この債務超過を解消するためには、もはや、メモリ事業の売却しか残された道はない。
綱川社長も、「半導体事業への外部資本の導入により、債務超過を解消する予定している」と語る。
「マジョリティにはこだわらない」というスタンスは変えていないため、裏を返せば、完全売却だけが選択肢ではなく、50%以上の資本導入という選択肢もあるが、そこにも、ウエスタンデジタルの動きが影響する可能性もある。
仮に、ウエスタンデジタルの出資比率が高まれば、独占禁止法の審査に時間がかかるといった可能性も生まれ、これも東芝にはマイナス要素になる。
2017年度中に、払い込みが完了しない場合、東芝は2年連続での期末での債務超過に陥り、上場廃止になる。東芝にとっては、少しでも早く決着をつけたいのが本音だ。
今回の会見では、民事再生法の適用などの法的整理の可能性や、一度、非上場化し、再建後に、再上場するスキームの検討、さらには半導体事業が売却できなかった際のプランBの実行などについての質問が相次いだが、綱川社長は、これらをすべて否定。現在の取り組みを実行することにこだわった。
だが、もはや残された時間は少なく、上場維持に関しても、土俵際の状況にあるのは誰の目にも明らかだ。ウエスタンデジタルとの話し合いが決着しない限り、東芝の打つ手は、もはや八方塞がりとなる。