AirPodsはブランド体験の価値を上げる名脇役

イヤホン本来の機能、音を聞くということにも触れておこう。音響に関しては専門外なので詳しい説明はできないが、これまで使っていたEarPodsと遜色ないと言っていいだろう。むしろ、AirPodsの軽さもあってより「広い場所」で自然に聞いているように感じられる。遠い音はより遠く、近い音はより近く、リズム・弦・管楽器などの質感の違いもクリアだ。ただし、周囲の音の拾い方もEarPodsと同等かそれ以上のようだ。環境音を遮断して音楽だけに没入したい場合には向いていないだろう。

一方で、ワイヤレスになったことによる損失もある。ひとつはリモコンボタンだ。再生/停止・早送り/早戻し・スキップ・音量調整・Siri、そしてカメラのシャッターボタンと、様々な機能を担っていたEarPodsのリモコンボタン。この中でAirPodsにできるのはSiriを呼び出すことだけだ。Siriの能力が向上したようで、アルバム名やアーティスト名は以前よりだいぶ通じるようになってきたので、音声で聞きたい曲をかけることはある程度可能だ。しかし、一時的に音を止めたり、スキップや音量調整くらいはSiriに頼まずタップのコマンドでできるようになってくれるとありがたい。

もう一つは、バッテリー充電が必要になったこと。ただし、これはケースが予備バッテリーになっているため、収納=チャージという仕組みが救いになっている。ケースの充電量にはかなり余裕があり、筆者の場合ケース側の充電は週に1回、多くて2回くらいで済みそうだ。通勤などで毎日3~4時間がっつり使っても毎日は必要ないだろう。それよりiPhoneの心配をしたほうが良さそうだ。Bluetooth通信を使用すため、当然ながら有線のイヤホンを使うよりiPhoneのバッテリー消費が大きくなる。次期iPhoneのバッテリー性能向上(とさらなるBluetooth省電力化)に期待せざるを得ない。

とはいえ、音楽を聴きながらでも充電できるのがワイヤレスの利点である

バッテリー残量はAirPodsのケースを開くとiPhoneにポップアップ表示

イヤホンの性能には関係ないが、最後にもう一つ気になるところを。それは、AirPodsのケースの方。ツルツルした素材に、角の丸いコロンとした形状。シンプルで可愛らしいフォルムだが、何というか、取りつく島がない。iPhone 6/7シリーズをむき出しで持っている時の不安感に近い。日本のメーカーであれば確実にストラップホールを設けたであろう。とにかく何かとっかかりになるものが欲しくて、細工してみたのがこちらだ。

マスキングテープでストラップがわりのひもを取り付け

テープや輪ゴムを巻くだけでもだいぶ安心感が違うので、ケースが持ちにくいと感じている方はお試しを

2週間使ってみた実感として、ワイヤレスなりの難点はあるもののワイヤレスであることの価値は確実に大きいと言える。少なくとも、筆者は以前のイヤホンに戻りたいと思えなくなった。スマートフォンが主役ならイヤホンは脇役かもしれないが、名脇役の存在は作品のレベルを高めるものだ。

次期iPhoneに標準でAirPodsが付属するのではないかという噂も聞くが、ブランド体験の価値を上げようとAppleが考えるなら、それくらいのことをしてもおかしくないと思える。品薄が続いているためご注文はお早めに、と言いたいところだが、もしかしたら6月のWWDCで出るかもしれない次期iPhoneについてのアナウンスを待つのもアリかもしれない。