木の根の階段を越え
高水山山頂からは木の根の階段を下っていくが、これが意外と楽しい。ここから次の岩茸石山までは、多少のアップダウンはあるものの基本的には平坦な尾根道が続くので、割と楽に歩ける。
途中、木立が途切れ、眺望が開ける場所もあり、周囲を取り巻く峰々を眺めると、随分と山深い場所にいるのだなと改めて実感する。心なしか、この辺りに響くウグイスの声は、平地のそれよりも力強く感じる。
高水山山頂から20分ほどで岩茸石山山頂の手前の上り坂に到達する。この上りは少しキツいが、その先に広がる絶景は、まさにご褒美というにふさわしい。まず、北東方向には、先ほど登頂した高水山が見える。北に目を移せば、埼玉県飯能市方面の眺望が広がり、西側に連なる標高の高い山々の一番奥に遥かに見えるのは、秩父連山だろう。
さて、昼食休憩をとったら先へ進むとしよう。岩茸石山の山頂からは、いったん高度を下げ、最初は杉木立の中を歩き、やがて山の回廊を回り込むように歩いていく。時々、トレイルランを楽しむ人とすれ違うが、よくあれだけのスピードで山道を走れるものだと思う。昔の修験者なども、あのような足取りで山々を駆け抜けていたのだろうか。
まるでボルダリング!?
さて、岩茸石山からおよそ30分で次の惣岳山の山頂手前の分かれ道に到着する。真っすぐ進めば、惣岳山の山頂へ。左に進めば、惣岳山の山頂へは登らずに、巻き道(迂回路)経由で御嶽駅方面へと通じている。
実は、この惣岳山山頂手前の上り坂は、今回のハイキングコースで最大の難所かもしれない。木の根や岩に手や足を上手く引っかけながら登っていくのは、まるでボルダリングのように楽しいので、体力に余裕があるなら、ぜひ山頂経由の道へ進もう。ただし、惣岳山の山頂は期待していたような眺望は望めず、木立の中に神社がまつられているのみだ。
ここから先は、基本的に下りが続き、途中、沢井駅方面への分岐があるが、そのまま御嶽駅方面へ真っ直ぐに進もう。木の根が地中深く張れずに地表に這う奇観が続く道や、送電線の鉄塔の真下を通る面白いポイントなどを通過し、ハイキングコースは、御嶽駅から徒歩5分ほどの慈恩寺という寺院の脇で終点となる。
ちなみに、御嶽駅は御嶽山の登山口としてにぎわっており、高水三山ハイキングコースに関しては案内が出ていない。そのため、こちら側から歩き始めるのは、道が分かりづらいかもしれない。
多摩の自然の恵をいただく
さて、お土産を探していたところ、御嶽駅に地元の特産品を使ったさまざまなお土産を売る、休日限定の露店が出ていたのでのぞいてみた。日本有数のわさびの産地として知られる奥多摩の生わさびや、わさび漬けなども売られていたが、今回購入したのは多摩エリアの柚(ゆず)を使った「多摩ゆずサイダー」だ。1本450円と、一般的な炭酸飲料に比べれば割高だが、品の良い香りと甘さが口の中に広がり、山歩きですっかり渇いた喉を潤してくれた。
さて、今回歩いた高水三山ハイキングコースは標高800m以下の低山とは言え、山歩きの魅力や楽しさが詰まった、とてもいいいハイキングコースだと思う。首都圏に住む人にとっては、東京都心からの所要時間や、ゆっくり歩いても4~5時間という距離も、日帰りの山登りにピッタリだ。
なお、3つの山の頂上およびスタートの軍畑駅、ゴールの御嶽駅は全て青梅市に属している。なんとなく奥多摩町にあるものと勘違いしそうだが、観光情報の問い合わせ等の際には注意してほしい。
筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)
旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。