パワーメーターの先

仮にシマノの脅威が予想以上だった場合はどうするのか。もちろん、パイオニアとて未来永劫、パワーメーターだけでサイクル事業を拡大していこうとしているわけではない。

2016年9月、米国で開催された自転車展示会のインターバイク。そこで披露された参考展示品からパイオニアの未来が少し見えてくる。

それはステム、シートポスト、シューズ、ヘルメットにセンサーデバイスを取り付け、センシングデータを解析するというもの。これらは自転車をこぐという動作がいかに難しいものであり、技術の塊であるかを教えてくれるものである。

自転車を効率よく前に進めるには、体幹を使って上体のブレを減らし、適切なタイミングで、ペダルへ体重を十分にかけることが必要だ。脚に力を入れてこぐと誤解されがちだが、体全体を使う全身運動だ。パイオニアが参考展示したものも、これらをチェックするためのセンサーデバイスである。

ステムからは、ハンドルにかかる力を検出し、必要以上にハンドルに荷重がかかりすぎていないかをチェックする(シートポストではサドル部分にどれだけの荷重がかかっているかを検出)。両足のシューズのつま先部分では、ペダリングの角度を検出し、必要以上に足首の角度が曲がりすぎていないかを検出する。ヘルメットからは頭部の揺れにより、体幹がきちんと使えているかを確認できる。すべてを適切な状態にすることで、プロ選手のような姿勢で自転車をこげるようになるのだ。

インターバイクでのパイオニアの参考展示

これらは、あくまで参考展示品に過ぎない。しかし、パイオニアが次の一手に向けたアクションを起こし始めていることを意味するものだ。

先ほど、自転車は全身運動だと書いた。最適な体の使い方は、パワーメーターでの計測値のアップにつながる。その人のそのときにおけるパワーの最大値は変わらないが、体全体を使うことでパワーロスを防げるというわけだ。いわば、参考展示品はパワーメーターとは不可分の関係にあり、ペダリングモニターシステムの魅力を引き上げる効果を持つものだ。

すでに保有する豊富なデータ量に加え、新製品がでれば、さらなる多様なデータの収集が可能になる。これらは、新たなサービスの創出につながるものだ。この循環が崩れない限り、パイオニアの魅力は薄れそうにない。巨人シマノが参入しても対抗できる力は十分にあると言えるのではなかろうか。