テスト販売がスタートしたのは2013年7月。販売代理店と相談し、国内40店舗に絞って販売を行った。パワーメーターは取り扱いの難しい商品だからだ。店内に置いておけば売れるわけではない。その魅力を顧客に適切に伝え、取り付けやサポートまで手がけ、使い方も指導できる深い知識がなければならない。

目論見は当たった。取扱店を絞ることで、十分に魅力を伝え販売することに成功したのだ。以後、販売店を徐々に増やし、今では国内800店で販売している。当初は「150店舗が限度でしょう」と販売代理店から言われたが、それ以上に大きな市場が築けた。

国内一択の状況

パイオニアのペダリングモニターシステムは、パワーメーターのなかでも後発の製品である。後発でも成功でき、"ペダモニのパイオニア"というイメージを作れたのはなぜか。

容易に思い浮かぶのは、価格と性能だ。パワーベクトルといういままでにない機能を搭載し、ワールドチームの使用に耐える耐久性と精度、価格は10万円台の半ばとはいえ、SRM社製のように30万円超のバカ高い値付けではない。

ペダリングモニターシステムのセンサー(左)とサイクルコンピュータ(右)

もうひとつ付け加えたいのは、パワーメーターという機材の使用上の特性だ。パワーメーターは精密機器であり、何らかのトラブルがあった場合に、すぐに修理してもらえる状況が望ましい。パワーメーターはペダルをこいだときに、「何ワット出た」と喜ぶものではなく、継続的なトレーニングに欠かせない機材だからだ。1カ月前に比べてどれだけ大きな力を出せるようになったのか、身体の疲労はどうなのか、レースに向けての調整を図れているのか、継続的にデータをとってこそ、有効な解析が可能になる。

仮に故障して販売店で解決できない場合は、メーカーに送り届けることになるが、この輸送・修理にかかる間は、データの採取ができなくなってしまう。海外製の場合、電池切れという単純なトラブルでも、メーカーの本国に送り、かなりの時間・費用を要するケースもあるようだ。この点、パイオニアの場合は静岡にサービスセンターがあり、データが採取できない時間は最小限に抑えられる。

国内で販売し、国内でサポートが受けられるのは、大きなメリットだ。販売側もお客に勧めるうえで、こうしたメリットは強調しやすい。お客もこうした側面は無視できないところだ。