テスラの影響は、車載用電池だけではない。2016年度は赤字に陥り、収益改善事業に位置づけられているソーラーも、テスラとの協業が回復の鍵になる。
「ソーラーは、国内の市場において引き続き厳しい状況が続くことから、海外での成長を目指すことになる。アンカーなどの海外子会社の販路活用に加えて、2016年12月に発表したテスラとの米バッファロー工場での生産開始の協業などに取り組む」とする。
パナソニックは、2016年度に海外で100MWの出荷を計画していたが、テスラの米バッファロー工場では2019年までに年間1GWの規模を目指しており、まさに「桁が変わる」規模の生産を目指す。
津賀社長は、「ソーラーはテスラ以外からも引き合いがあるが、我々のリソースの問題がある。今年はバッファロー工場の立ち上げに、全面的にリソースを割くことになる」と、ここでも2018年度までの成長戦略では、テスラとの協業が鍵になる。
言い換えれば、テスラがくしゃみをすれば、パナソニックの成長事業は、大きな転換を余儀なくされる可能性を含んでいるともいえるのだ。
成長事業に急ブレーキ
2つめが、これまでの成長を牽引してきたアビオニクス(航空機内AVシステム)関連事業に急ブレーキがかかった点だ。
アビオニクス事業を中心とするAVCネットワークス(2017年度からはコネクテッドソリューションズに名称を変更)のソリューション事業は、2016年度実績では、前年度の特需からの反動もあり、売上高は前年比9%減の4689億円と減収になった。
もともと津賀社長は、「事業部基軸の経営のなかで、事業部を代表し、象徴し、他の事業部を引っ張る存在」とアビオニクス事業を位置づけていたが、「アビオニクスの主力事業となるインフライトエンターテインメントシステムは、すでに市場が成熟していると判断し、2017年度からは、高成長事業から、安定成長事業に位置づける」と、格下げした。
さらに、米国子会社であるパナソニックアビオニクスのアビオニクス事業に関して、米国司法省および米国証券取引委員会から、連邦海外腐敗行為防止法および米国証券関連法に基づく調査を受けており、2016年度決算でも、アビオニクス事業に対する米国政府当局調査関連の引当金を計上。これがAVCネットワークスの減益要因のひとつになっている。
「米当局と協議中であり、今回の引当金は合理的にできたと考えている。だが、これはすべての処理が終わったとか、事実を認めたというものではない」と津賀社長はコメント。今後も、米当局との協議は継続され、事業に対する影響がどんな形で表れるのかも気になるところだ。いずれにしろ、成長の柱のひとつが欠けたという事実は否めない。