実験開始は両社にとってグッドタイミング?

物流の世界では今、ドライバーの過酷な労働環境が問題になっている。業界最大手でもあるヤマト運輸では今年2月、労働組合が今年の春闘で荷物の取り扱いを抑える要求を行うと発表。賃下げにもつながる取扱量低下を組合側が求めるという異例の事態になった。

これを受けて経営側は、宅急便の基本運賃を27年ぶりに値上げすると発表。さらに、インターネット通販大手のアマゾンをはじめ、大口の法人客約1000社との間でも値上げ交渉を進め、取扱荷物量を減らすことで労働環境改善を目指していくという。

しかし、ロボネコヤマトの実証実験は、この問題を受けて始まったわけではない。昨年7月にDeNAとの共同発表を行ったことで分かるように、ドライバー問題が表面化する昨年秋より前から、同社はこの問題を深刻に受け止め、問題解決のための手段をいろいろと考えていたのだ。ロボネコヤマトはその1つと見ることができる。

“走る宅配ボックス”は物流業界の課題解決につながるか

一方のDeNAは、多くの方がご存知のように、昨年秋に同社が運営していたまとめサイトで問題のある記事や画像が大量に見つかり、10カテゴリーあったまとめサイトすべてを休止するという事態に追い込まれた。同社にとっての損害はかなりのレベルに上ると思われる。

しかし、DeNAもヤマト運輸と同じように、2年前から自動運転の分野に積極的に取り組んでおり、ロボットタクシーやロボネコヤマト以外にも、昨年からはフランス製無人運転小型バス「イージーマイルEZ10」を全国各地で実験走行させて経験を積んでいる。

ロボネコヤマトの実証実験がこの時期にスタートしたのは、ヤマト運輸、DeNA両社の状況を考えると、とてもタイミングが良いと感じる。でも前述したように、両社はこの時期を狙っていたわけではなく、昨年時点で、2017年春から1年間の実証実験を予定していた。予定どおりの動きだったのである。

自動運転の実用化もスケジュールどおりか

今後ロボネコヤマトは、オペレーターを乗せた自動運転(SAEなどが定義するレベル3)の試験サービスを始めながら、ビジネスモデルの検討を行い、2020年頃には無人運転(同レベル4)のサービスを目指すという。

今回の実証実験が予定どおりであったことを考えると、今後もこのスケジュール通りに進むことが考えられるし、そうなれば物流問題は解決の方向に向かうことが予想される。両社の物流改革にこれからも期待したい。