春らんまんなこの季節、晴れた休日はいつもよりもゆったりと時間が流れていくもの。そんな日は、自由で気ままな大人の散策をしてみてはいかがだろうか。東京にいながら普段と違った道行きを楽しめるエリア、「谷根千」を紹介しよう。

お休みの日のそぞろ歩き

歩けど歩けど、見どころが尽きない「谷根千」

今や、東京の名所として知られる「谷根千」。谷根千とは、谷中・根津・千駄木界隈の総称で、江戸時代から多くの寺院が集まる寺町である。しかし、もちろん"寺が多い"というだけの街ではない。関東大震災や戦火を逃れた下町風情と、その情緒ある街並みを巧みに生かしたハイカラさも兼ね備えたエリアなのだ。つまりは、本当のレトロも、レトロモダンも、さらには寺町であるがゆえのちょっとした自然も楽しめるのが谷根千というわけだ。

今も昭和が息づく

3つの地域となると相当広域のようだが、JR山手線・京浜東北線の「日暮里」駅から東京メトロ千代田線の「千駄木」駅・「根津」駅を大きく丸で囲んださほど広くない範囲である。意外とお散歩に適していると言えるだろう。今回は、日暮里駅から出発し、谷中ぎんざ~よみせ通り~観音寺築地塀~谷中霊園~上野桜木あたり~根津神社というルート。散策しつつの、食べ歩きや飲み歩きを紹介しよう。

「谷中ぎんざ」からスタート! 出だしから満腹注意

谷中と言えば「谷中ぎんざ」。夕焼けの美しい階段「夕焼けだんだん」があることでも知られている。また、猫が多いと言われることもあるが、ほとんど出くわさないのであまり期待してはいけない。

谷中ぎんざは、全長175mの短い商店街である。木造の建築や瓦の屋根、街灯にいたるまで、昭和レトロな風情に包まれている。その軒下では、コロッケにメンチカツ、たい焼き、ソフトクリーム等々、とにかく目移りしてしまうほど多くの食べ歩きアイテムが待ち構えている。いずれも数百円程度のため、ついつい手を出してしまいたくなるが、一通り品定めをしてから購入してもいいだろう。

谷中ぎんざはお楽しみの宝庫!

やはり、食べ歩きに揚げ物は欠かせない。谷中ぎんざにいくつかある肉屋の中から、今回は「肉のサトー」を選んでみた。「谷中メンチ」(200円)、「谷中コロッケ」(100円)「チーズと大葉の肉巻きフライ」(120円)等々。こんがりきつね色がたまらない。

「肉のサトー」の「谷中メンチ(右)」(200円)と「チーズと大葉の肉巻きフライ(左)」(120円)

熱々ジューシーな谷中メンチ。"谷中"と付いていると、意味もなく特別なものを感じてしまう(本当は意味があるのかも!? )

続いて、「和栗や」で栗を使ったスイーツなどと洒落こんでみる。暖かな日差しの日が増えるにつれ、夏を待つまでもなくソフトクリームやかき氷を食べたくなるもの。和栗をふんだんに使用した「栗薫(くりかおる)ソフトクリーム」(500円)は、ほんのりとした栗の甘みの優しい味だ。

栗色の「栗薫(くりかおる)ソフトクリーム」(500円)

栗と砂糖だけの和菓子「栗薫」(700円)

サクサク感が楽しい「和栗パイ」(400円)

おなかが落ち着いたところで、大人の楽しみである"お昼からのほろ酔い"をひとつ。生ビールを売っているお店はいくつかあるが、「越後屋本店」はさすがに酒屋なだけに、ワインや日本酒、柚子酒なども飲み歩き用に店頭販売している。

なみなみと注がれた「長野産赤ワイン」(400円)。甘口と書かれていたが、ぶどうの素材の甘みでしっかりした味わいだ。そのほか、白ワイン、日本酒、柚子酒、エビス樽生ビールも400円程度

「猫がいると思ったのに……」と残念な人には、猫のチョコレートはいかがだろう。いろいろな柄の猫が入ったもののほか、招き猫シリーズなどもある。

谷中ぎんざに入ってすぐの飴屋「後藤の飴」の「ネコチョコ」(140円/8個入り)

洋風なおまんじゅうまで種類も豊富

谷中ぎんざを出て左へ進むと、そこはもう、よみせ通り。楽しげな響きの商店街である。ところどころお洒落なカフェなどがあり、休日はにぎやかだ。ここにはところてんで知られる「三洋食品」があるのだが、残念ながらこの日は定休日(日曜日)だった。

よみせ通りを進んでいくと、「かりんとう饅頭」のお店「福丸饅頭」を発見。このお店の特徴は、とにかく安くて種類が豊富なことだ。和菓子が苦手な人でも楽しめる洋風なおまんじゅうも多い。店内にはベンチがあるため、おまんじゅうと無料でいただけるお茶で軽く小休止してみるのもいいだろう。

よみせ通りにはお店が点在している。左右を見渡して探してみたい

「福丸饅頭」の「かりんとう饅頭(左)」と「芋かりんとう饅頭(右)」各80円。表面が香ばしく、サクサクした食感

「いちごフロマージュ」(100円)。大福の中にいちごのフロマージュといちごソースが入っている

「カスタード饅頭」(160円/10個入り)。みんなでいろいろ買って分け合うのも楽しい。「安すぎじゃないですか!? 」との問いに、店員のお兄さんが笑顔で「がんばってます! 」と答えた

ここまででも、すでに食べ過ぎてしまったかも……。今度は"おなかの小休止"も兼ねて、町並みを目で楽しんでみよう。