日本IBMは4月27日、28日の2日間、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪国際館パミールにおいて、「IBM Watson Summit 2017」を開催している。同イベントは、経営変革に挑むビジネスリーダーを対象に、構想を具現化するために、WatsonやIBMクラウドを活用したアプローチを、具体的な事例やデモを交えて紹介するものとなった。

初日となる27日午前に行われた基調講演では、2017年4月に社長に就任した日本IBMのエリー・キーナン氏が登壇。報道関係者を前に発言したのは、これが最初の機会となった。

日本IBM 代表取締役社長のエリー・キーナン(Elly Keinan)氏

キーナン社長は、「昨年のIBM Watson Summitのテーマは、AIとはなにか、コグニティブとはなにかということであったが、今年は企業および社会に対して、いかに実践していくかということにフォーカスしたイベントになっている。Watsonは、2011年にクイズ王に勝利して以来、進化を続け、昨年までに4億人が触れている。2017年には、Watsonは10億人の人々と触れあうことになるだろう。また、500社以上が参加するエコシステムが構築され、日本では、約40業種において、数100社の企業がWatsonおよびIBMクラウドを活用している。これによって業界を変え、人の創造性を追求する手伝いをし、精緻な感覚も身につけてきた」などと語った。

具体例について同氏は、「たとえば、Watsonは、東京大学医科学研究所の事例において、2000万件のバイオメディカルデータを読み込み、診断の際に見落とされていた遺伝子の突然変異を突き止め、より的確な診断を促すことに成功した。Watsonは命をも救っている。また、日本ではわずか12%の企業が、適切なデジタルセキュリティを実装しているに過ぎないが、日本の金融機関への攻撃はますます増加する傾向にある。Watsonサイバーセキュリティは毎日350億件ものインシデントをモニターしており、年間1万件のリサーチペーパーを読み込み、月6万件のブログをモニターして、システムを攻撃から守っている。このように、Watsonはもっとも重要な分野で利用されており、エンターテインメント、教育、物流、運輸などのほか、様々な業界でも活用されている。さらに、Watsonは、創造性の分野でも力を発揮し、日本では海外料理本のトップ50のなかに入る本を出版し、米国では作曲の手伝いも行っている。制作された曲は、ビルボードトップ10入りした。これは、5年分のソーシャルメディアの履歴をみながら、社会がどんなところに関心があるのかを特定して作曲の支援をしたものだ。さらに、日本では、デザイナーの三浦大地さんと連携して、コグニティブドレスを制作した。今後は、見たり、聞いたり、読む力をさらに高めることになる」とコメントした。

同氏はWatsonの成功には3つの要因があるとし、「ひとつめはコグニティブを中核に持ってきた点。しかも、それが、業種、業界に特化した提案ができる点が強みであり、だからこそ、しっかりとワークフローのなかに組み込むことができる。これがWatson on IBM Cloudの特徴だ。2つめは、Data First Platformである点だ。現在のソリューションには膨大なデータが必要とされる。だが、データの20%はインターネットで検索できるが、残りの80%は独自のデータであり、これこそが企業や個人の優位性を担保するデータである。我々はこれを守ることに力を注いでいる。他社はこれを搾取しようとしている。3つめは、エンタープライズストロングな環境を実現している点だ。ビジネス環境のなかで、拡張性を持つこと、選択肢を提供すること、Watsonのモニタリングの能力を活用して、それぞれの業界に特化した洞察を実現できる点がWatsonの価値になる。これによって、Watsonは多くの仕事を達成し、日本のお客様とも多くの仕事をしてきた。これからもみなさんと我々が一緒に取り組めば、健康で、無駄が少なく、生産性が高く、パーソナル化された、安全で持続可能な世界を構築できると考えている」と述べた。