今後、トールをどうするのか

減損計上を発表した会見で、トールを“高値づかみ”したことを率直に認めた日本郵政の長門正貢社長。同氏が買収決定時に社長だったわけではないが、当時の判断として、豪州経済の見通しに甘さがあったという見方については否定しなかった。トール買収で「不幸だった」点は、「高い買い物」だったことと「トールが豪州の企業であったこと」だと長門氏は語った。

記者会見に臨む日本郵政取締役兼代表執行役社長の長門正貢氏

今後、日本郵政はトールをどうするのか。長門氏は海外展開に注力する日本郵政の姿勢は「いささかも変わらない」とし、トールは海外展開の中核であり橋頭堡であり続けると断言した。トールの改革としては、2017年1月に経営陣を刷新しており、今後は2000人の人員削減などリストラを進め、同社を「筋肉質」な企業にしていくという。

そもそも、日本郵政が海外の大型買収案件に手を出した背景には、総合物流企業として発展していくためには、国内市場だけを相手にしていたのでは成長余地が乏しいとの判断があった。「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命保険」で利益の大部分を稼ぎ出す日本郵政グループだが、国内の郵便市場が縮小を続けるなかで、「日本郵便」の成長の場として海外に目を向け、トールの買収に踏み切った形だ。

トール買収の際は、シナジー効果の見えにくさを懸念する声もあったという。日本郵政は今後も、海外事業の拡大に向けて国内外でM&A案件を検討していく様子だが、今後のM&Aでは、シナジー効果が明確化されているかどうかに厳しい視線が集まりそうだ。