今回の説明会&体験会では、α9の開発ストーリーや目指すところ、ソニーのデジタルカメラ戦略なども語られた。

先述したように、α9が狙うのはプロ市場。プロ向けの映像機器では確固たる地位を築いているソニーだが、ことカメラのプロ市場には、キヤノンとニコンという2強がいる。壇上に立ったソニーマーケティング 代表取締役社長の河野弘氏は、次のように話した。

ソニーマーケティング 河野弘氏

「ソニーの使命は、技術に裏打ちされた製品でプロの活動を支援すること。αのカテゴリは、ソニーのミッションを体現していくところ。プロの期待を受け止め、あくなき探求のもと、進化がカタチとなってソニーしかできない製品となっていく。

いよいよ新作となるα9は、常識を打ち破る新次元の高速性能を持った革新的なカメラだ。プロにアピールできる仕上がり。創作をかきたて、撮影と表現の可能性を広げる。

プロに使ってもらうために、短期間でサポート体制を充実させていく。全国のソニーストアとαプラザにて、技術サポートやメンテナンスサービスを提供する。また、トータルのカメラ市場には、プロが大きな影響を及ぼす。さまざまな取り組みによって、ハイアマチュアから初心者まで、ファンを増やしていきたい」(河野氏)。

夢のイメージセンサー

デジタルカメラ市場が縮小する中、レンズ交換式カメラも例外ではない。ただ、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ マーケティング部門 デジタルイメージング本部 部門長 坂本裕司氏によると、35mmフルサイズ機と対応レンズに限れば安定した市場規模を維持しており、全体における35mmフルサイズ機と対応レンズの構成比は年々高くなっているそうだ。

レンズ交換式カメラの動向

ソニーのフルサイズ機ビジネス

ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ 坂本裕司氏

ソニーも着実にシェアをアップしてきたが、2016年4月の熊本地震でイメージセンサー工場が被災。生産に多大な影響が生じた(現在ではフル生産体制まで復旧している)。

だが、復旧における一つのプロジェクトとして、エンジニアや関係者が決してあきらめなかったというのが、α9に搭載されたイメージセンサー「Exmor RS」の開発だ。

「Exmor RSは夢のイメージセンサー。歴史を動かし、現実となる瞬間を待っていた。カメラの性能限界を突破し、表現に無限の可能性を開放する。αシリーズのプロユーザーは増えており、プロの声を反映させることを目指してきた。より魅力的に、革新的にする努力を続けてきて、ここに結実した」(坂本氏)。

被災の中でも続けられたExmor RSの開発プロジェクト

続けて、Exmor RSやα9を説明してくれたのは、ソニーマーケティング プロダクツビジネス本部 デジタルイメージングビジネス部 統括部長の小笠原啓克氏。ここでは技術面については割愛するが、ポイントは「電子シャッター」だ。

ソニーマーケティング 小笠原啓克氏

前ページでも紹介したように、α9は電子シャッターによって優れた高速性能を実現している。電子シャッターはその仕組み上、「動いている被写体が歪んで写る」という弱点を抱えているのだが、Exmor RSとα9は、この弱点をほぼ解決した。さらに「無音で撮影」という武器もある。

スピード性能や無音撮影を引っ提げ、α9が狙うターゲットの一つはスポーツ撮影だ。

特にプロスポーツの撮影では、画質を含めたスピード性能において、従来のハイエンド一眼レフが頂点だった。そこに食い込み、切り崩せるか。小笠原氏は、「電子シャッターがメカシャッターを追い越し、置き換えたら、カメラをより小型軽量に、高性能に、高速にできる。ここから真のデジタル時代が始まる」と自信を見せつつ結んだ。