いわゆる"格安SIMサービス"を巡り、国民生活センターに寄せられるトラブルの相談件数が増えているという。そうした報道を目にすると、つい「安いからトラブルも多いのではないか」と疑ってしまいがちだ。そもそも、なぜ安くできるのだろう? 都内で開催されたトークイベントで、総務省の担当官がそんな消費者の疑問に答えた。

格安SIMサービスについて、総務省が解説

格安SIMサービスを提供するMVNO事業者のインターネットイニシアティブ(IIJ)は15日、都内でトークイベントを開催した。ゲストに招かれた総務省 総合通信基盤局の内藤新一氏は「MVNOの料金は、なぜ安いの?」「MVNOの通信品質、大手携帯電話事業者と同じなの?」「MVNOは、なぜドコモ系ばかりなの?」「ドコモの端末はMVNOでそのまま使えるのに、その他の大手携帯電話事業者の端末は使えないのはなぜ?」という4つのテーマで、格安SIMサービスの安さの秘密を紐解いていった。

イベントに登壇した総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課 企画官 内藤 新一氏。格安SIMサービスのからくりを解説した

MVNOの料金は、なぜ安いの?

MVNOの料金は、なぜ安いのだろうか。大きくは、ネットワーク設備をMNOから借りるために開発費や維持費がかからない、販売店を設けずに営業コストも削減している、といった理由が挙げられる。

内藤氏は、そうしたことも踏まえつつ「料金の値下げ競争が起こりやすい市場構造にもひとつの要因がある」と指摘した。

総務省の調査によれば、2016年のMVNOのシェアは携帯電話利用者の1割弱にまで急伸。MNO(大手通信事業者)が3社しかないのに対して、格安SIMサービスを提供するMVNOは、4月15日現在で600社以上も存在している。つまり「プレイヤーが非常に多い、切磋琢磨できる市場構造的になっている」(内藤氏)ことが安さにつながっているという。

MVNOのシェアは、2016年には携帯電話利用者の1割弱にまで急伸。現在、600社以上のMVNOがサービス競争を繰り広げている

ところで、既述の通りMVNOはMNOからネットワークを借りてサービスを展開している。MNOにしてみればMVNOは商売敵といえなくもない。ネットワークを貸すことは、いわば敵に塩を送るようなものだ。実際そうこうしている間に、消費者の間にはMVNOの認知度が高まり、無視できない競争相手に成長してしまった。今後、MNOがMVNOに自社のネットワークを貸すことを拒む、あるいは接続料を上げる、そんなリスクは存在しないのだろうか?

内藤氏によれば、電気通信事業法という法律が定められているため、そうした心配はないという。第32条には、電気通信事業者にネットワークを利用させる義務が定められている。そして利用者の多いMNOには「データ接続など一定のネットワーク機能を提供すること」に加えて「ネットワークの接続料金について、原価+利潤を回収できる水準以下とする義務(第34条)」があると紹介した。総務省としては、MVNOがMNOのネットワークを借り易くする環境を整え、市場の活性化を図っていきたい考えだ。

電気通信事業法により、MVNOが参入しやすい環境が整備されつつある

それではMNOとMVNOで、サービスの品質にどのような違いがあるのだろうか。