コーニングインターナショナル 興梠貴治氏

まず、オプティカルコミュニケーション部門だが、コーニングインターナショナル 光通信事業部長 興梠貴治氏が対応してくれた。

「コーニングは1970年に低ロスタイプの光ファイバを開発し、光通信インフラの礎を築きました」と、興梠氏は切り出した。ネット社会となった現在、国際通信や国内の基幹通信は光ファイバが支えている。すでに、光ファイバによる通信インフラの整備は終局となっているが、新たな需要が生まれてきているという。それがデータセンターなどの配線だ。 ICT業界では、合い言葉のように「IoT」というキーワードが使われるようになった。“モノのインターネット”により収集されたビッグデータを、保存・分析するのがデータセンターだ。データが増えれば増えるほど、端末やサーバー間の送受信速度が重要になってくる。コーニングが提供する光ファイバは、将来的に400GB/秒のデータ送受信に対応しており、ビッグデータ時代のデータ送受信のインフラとして準備を整えている。

山中教授も使用する理化学用機器

コーニングインターナショナル 豊島恭氏

ライフサイエンス部門については、コーニングインターナショナル ライフサイエンス事業部長 豊島恭氏が解説してくれた。

豊島氏によると、同部門の主軸は、細胞培養などに使われる理化学用の器具だという。ライフサイエンスというと、“人々の健康”を支える食事や薬というイメージが強いが、それよりももっと上流の“研究”という分野での必需品を提供している。iPS細胞の開発に成功した京都大学の山中教授も、同社の器具を使っているという。

面白いのは、この部門で「PYREX」(パイレックス)というガラス器具を扱っていること。パイレックスといえば食器などのキッチン用品で有名だが、その領域はすでにコーニング以外の企業に譲渡されている。コーニングが扱うのは、パイレックスのビーカーやフラスコといった、いわゆる“理科の実験”で使うような器具だ。

理科の実験を行った小学生のときには気づくはずもないが、スマホの表面ガラスに触れるずっと以前に、コーニングの製品を触っていたことになる。

さて、同社の主事業をザッと紹介してきたが、複数の分野でトップクラスのシェアを誇る。惜しむべくは、日本での知名度の低さ。試しに筆者のまわりの人や、よく行く飲食店のスタッフに「コーニングっていう会社知っています?」と、20人ぐらいに問いかけたが、「知っている」と答えたのはわずか2人。その2人とも、ICT業界で長く取材を続けてきた記者であるから知っていて当然だ。BtoB向け事業が中心なので仕方ないとはいえ、企業規模や長い社歴にしては、コーニングの“知られざる”ぶりは、次元がちがうようだ。