漠然とした対応店舗計画の謎
様々な配慮が必要となる今回の取り組み。訪日外国人の増加でムスリムも増加し、2020年に向けて取扱店舗がさらに増加も……という流れはわかりやすい。しかし、店舗の広がりについては歯切れが悪い。
牛角マーケティング部の本間達也部長は「2020年までに何店舗か、というところまでは現状描けていない。チャレンジ的な位置づけになる。ただし、主要都市や浅草のように訪日外国人が多いエリアに展開するイメージは持っている」と話す。
食材の仕入れ先が限定的なムスリム対応メニューにおいて、スケールメリットを出そうとすれば、店舗拡大の計画があっていいはず。しかし、それが漠然としかない。いや、そもそも、オペレーションが煩雑になるくらいなら、いっそのことムスリム専門店にすればよかったのでは? とも思える。
答えは海外にあり
なぜ、そうしなかったのか。こうした一連の疑問を本間氏にぶつけてみると、次のような答えが返ってきた。
当初は牛角が提供している通常メニューに再度注目してもらうための旗艦店、PR店の出店計画がそもそもの始まりだったという(そのため、通常メニューは外せない)。しかし、赤坂という立地上、訪日外国人が多いことが特徴となる。また、企業戦略を考えると、東南アジアとアラブ首長国連邦・サウジアラビアへの出店計画もあり、フランチャイズ本部としては、赤坂店を通じて、トライアルしておくことが必要だという。
海外戦略について調べると、親会社のコロワイドは「牛角」「温野菜」ブランドを主軸とした海外出店を計画している。特にASEAN諸国を中心としたアジアへの出店も進めており、2019年までの海外450店舗体制を築く計画だ。さらに、昨年9月にはアラブ首長国連邦・サウジアラビアにおいて、5年で6店舗を出店する計画も発表している。
ASEAN諸国でもインドネシアやマレーシアはイスラム教徒が多いし、今後中東へ進出を図るならば、ノウハウの蓄積という意味では、確かに大きな意味を持ちそうだ。牛角赤坂店は日本人も、ムスリムも楽しめる店舗であり、コロワイドグループが今後取り組むべきテーマを詰めた、そんな実験店舗とも言えそうだ。