コラボ店への模様替えが早かった理由

まずは、紫関氏から聞いた話を総合し、FKの強みを分析してみたい。

強みで1番に挙げられるのが40年の歴史だ。FKの創業は40年前の1977年。業界的に見ても老舗の部類に入る。早くスタートを切ったチェーン店の特色として、FKの既存店舗は立地が良い。駅前や繁華街などにある既存のFKに、ウェンディーズのハンバーガーを追加するだけで、コラボ店を素早く展開することが可能だったのだ。

FKの調理設備に、ウェンディーズのハンバーガーがマッチしたことも、コラボ店の素早い展開に役立った。FKで使っているフラットグリルという設備で、ウェンディーズのバーガーにも対応できたのだ。コラボ店への模様替えが、調理設備の入れ替えを伴うと費用は膨れ上がるわけだが、ファーストキッチン・ウェンディーズは投資額を抑えて出店できるのが特徴だ。

六本木交差点の北西側(国立新美術館などがある方)に位置する「ファーストキッチン・ウェンディーズ六本木」

直火焼きが自慢の店舗などで使っているパティの焼成設備に比べると、フラットグリルはスペースをとらないという特色がある。FKをコラボ店に模様替えする際、キッチンスペースを拡げずに済むことは、1坪あたり売上高が重要な指標となるファーストフード業界では見逃せないポイントだ。

歴史に基づく企業イメージの定着と知名度の高さもFKの強みだ。FKの名を知らないという人は少ないだろうし、取り扱い商品や価格帯も大方は想像がつく。

競合他社がひしめくファーストフード業界に身を置いてきたFKにとって、厳しい事業環境の中で磨かれた人材も、今は会社の財産となって息づいている。人材育成・人材確保が業界共通の課題となっている中、FKは人材の流動性が極めて少ない環境にあるという。人材の流動性が低いということは、企業風土やフィロソフィーを共有した人材がそのまま成長していることを意味する。

まとめると、FKの強みは歴史、立地、人材だ。外資系の外食チェーンが日本に進出する場合、課題となるのは場所と人の確保だと紫関氏も語っていたが、日本再上陸を果たしたウェンディーズにとってみても、FKの強みは魅力的に映ったのだろう。

ウェンディーズのブランドをいかに活用するか

今回、ウェンディーズとのコラボを始めたことは、FKの持つ強みをさらに磨き上げる効果があると紫関氏は語る。両社の合併は、一方が飲み込まれたというよりも、両社が持つ強みの相乗効果を狙っているものだと思える。FKとファーストキッチン・ウェンディーズという2つのビジネスモデルが同時進行し、しのぎを削っているという印象を受けた。

今回のコラボビジネスにあたって、ウェンディーズからマニュアルが届いたり、先方のオペレーションを押し付けられたりすることはなかったという。米国のウェンディーズ本部は、「(コラボで)何ができますか?」と聞いてくるほど柔軟な姿勢を示しているそうだ。

この話を受けてFK側が考えたのが、「(店舗数で)世界3位のウェンディーズというブランドをどういかすか」ということだった。