綱川社長は、「上場廃止は東証が判断するものである。当社としては、社会インフラを中心とした新たなポートフォリオによる事業展開、メモリ事業の売却などによる財務基盤の改善に力を注ぐ」とし、体質改善に取り組む姿勢を強調してみせたが、土俵際である事実は拭えない。
5月中旬までの取り組みが、140年以上の歴史を持つ東芝の今後を左右する。
決算 海外原子力の影響大きく
一方、独立監査人による不表明のままで発表された2016年度第3四半期業績は、売上高が前年同期比4.2%減の3兆8468億円、営業損失は前年同期比3444億円減のマイナス5762億円の赤字。税引前損失は4360億円減のマイナス5970億円の赤字、当期純損失は531億円減のマイナス5325億円の赤字となった。
原子力事業におけるのれん減損でマイナス7166億円を計上したことにより大幅な赤字となったが、それでも、「原子力以外の事業については、ほぼすべての事業において対前年同期比で改善した」(東芝の取締役代表執行役専務の平田政善氏)と総括。「メモリおよびHDDの販売台数増加による増収がみられた。とくに、メモリはさらに利益の改善が進み、第3四半期では23%の営業利益率になり、第3四半期累計でも16%の営業利益率を達成した」と胸を張った。
確かに、海外原子力事業の影響さえなければ、評価されるべき業績であったともいえる。
綱川社長は、「当社の事業は、多額の損失原因となった海外原子力事業を除いて、概ね順調に推移している」と語ってみせた。
東芝では、ウェスチングハウスグループによる米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続きの申し立てに伴い、その影響額が確定できないことを理由に、これまで明らかにしていた2016年度通期業績見通しの公表を見送ったが、一定の仮定のもとに想定される影響額を考慮すると、当期純利益に対しては、マイナス6200億円の追加影響があるとし、2月14日公表値の3900億円を加えると、1兆100億円の最終赤字になることが示された。同時に、株主資本はマイナス6200億円、純資産はマイナス3400億円を見込んでいることも示した。
海外原子力事業は、ウェスチングハウスが連結対象から外れたことで、「この非連結化は、海外原子力事業のリスクを遮断するという当社の方針に合致したもの」(綱川社長)とする一方、1654億円ののれん代が残るランディス・ギアについても、「現在、IPOや売却を含む様々な戦略的選択肢を検討している」(東芝・平田専務)と語る。
さらに、「2016年度に約1600億円の保有資産の売却を行うとともに、役員の報酬返上、役職者の給与減額、役職者や一般社員の賞与減額、日当削減などの緊急対策を実施してきた。現在、メモリ事業のマジョリティ譲渡を含む外部資本の導入を決定し、譲渡先の選定プロセスを進めているところであり、これにより、財務状況を改善できる」とする。
メモリ事業の売却では、1兆円とも、2兆円とも言われる資金を得ることができ、東芝の財務体質はこれによって大きく改善することになるのは明らかだ。
だが、社会的信用のない数字を公表したり、上場廃止となるようでは、東芝の再生の道はないといっていい。