接続料の下落はMVNOの料金値下げに直結しない
とはいえNTTドコモの接続料も下がっているのだから、MVNOは現状の料金やサービスを維持していれば、コストが減少し利益が上がることとなる。それだけに期待されるのは、接続料の下落によって各MVNOのサービスの料金が一層安くなるのではないか? ということだ。
だが正直な所、その可能性は低いと筆者は見る。MVNO同士の競争激化によって各社の基本料金は既にかなりの水準まで下がっており、大半のMVNOが"薄利多売"の状態に陥っているからだ。加えて最近では芸能人を起用したテレビCMを打ったり、実店舗を構えたりするなど、大手キャリアの如くコストをかけた施策を展開するMVNOも増えており、その多くが赤字覚悟で競争を仕掛けているものと考えられる。
またMVNOの競争相手はMVNO同士だけではない。ソフトバンクのワイモバイルブランドや、(厳密にはMVNOなのだが)KDDI傘下のUQコミュニケーションズが展開する「UQ mobile」など、資金面でも強力な後ろ盾があるキャリア系のサブブランドとの競争も熾烈になってきていることから、MVNOには今後一層、競争力を高めるための資金を必要としている。
それゆえもしこれ以上基本料を下げ、さらなる値下げ競争を仕掛けてしまえば、MVNOの業界全体で自らの首を締めてしまうことにもなりかねない。それだけに、接続料が下がった分の利益は値下げではなく、自らの競争力を高めるための施策に活用されると考えられそうだ。
そうした競争施策によって、セット販売によるサービスや端末のラインアップが拡大したり、SIMを即日開通できる実店舗が全国に増えたり、サポートの充実度が高まったりするなど、MVNOのサービス向上が進むことは十分考えられる。接続料低下による直接的なユーザーメリットはあまりないかもしれないが、間接的に何らかのユーザーメリットを生む可能性は高いといえそうだ。