バックボーンの翻訳エンジンが一新
実はこのSkype翻訳の変更は、マイクロソフトが持つクラウドサービス向けの翻訳エンジンそのものの更新によるものだ。これまでは統計学的手法をとった機械学習ベースのエンジンだったものが、ディープニューラルネットワークによるものに変更されている。この変更により、Skype翻訳に加えて、WindowsおよびiOS、Android向けのアプリ「Microsoft Translator」のライブ翻訳と、Microsoft Azureを利用している企業向けの「Microsoft Translator Speech API」サービス、それに、主にMicrosoft Officeに搭載された「翻訳」機能を利用できるアプリ/サービス群が対象となる。
このうち有料サービスになるのはSpeech APIだけで、その他のアプリやサービスは追加料金等は発生せず、そのまま利用できる。Speech APIは有料サービスになるが、Skype翻訳で利用していないような機能も利用できるようになるなど、対価に見合ったサービスが利用できるようだ(参考までに、翻訳エンジンそのものは、ドストエフスキーの「罪と罰」全巻を1秒以内に翻訳できるだけのパフォーマンスを持つという)。
Skypeは2004年に誕生した、メッセージング/通話アプリとしては老舗で、全世界で約3億人が利用しているという人気アプリだ。中でも固定電話への通話機能として有料の「Skype Out」サービスを持ち、国際電話を少しでも安くしようという人々の間で広く使われている。日本ではLINEが優勢となっているため、存在感はそこまで大きくないが、今回のリアルタイム翻訳機能の強化は、シェアの変動にまでは繋がらないにせよ、旅行や出張などで海外との通話機会の多いユーザーはもちろん、Skypeを多用している一部のホビーユーザーの間で人気を博する可能性が高い。またビジネスユースでも、海外との取引がある場合、知っておくと他人に差をつけられるテクニックのひとつとして数えられるかもしれない。
また収益の基本となるSpeech APIサービスだが、Webサービスやスマートフォン用アプリの品質を高める上で興味深い存在だ。グーグルなども同様のサービスを提供しているが、音声によるリアルタイム翻訳という点で一歩先んじていることもあり、マイクロソフトにとっては商機拡大のチャンスとなるだろう。