低遅延の実現はモバイルエッジコンピューティングで

LTEの時は、従来別々に処理していた音声通話も全てデータ通信で処理するなどし、ネットワークの構成をシンプルにしたことによって、3Gよりも遅延を少なくすることができた。だがLTEの流れをくむ5Gでは同様の手法を採ることができないことから、どのようにして低遅延を実現しようとしているのかというと、「エッジコンピューティング」である。 従来、クラウドを活用したサービスといえば、全てユーザーの端末とクラウドで直接やり取りする形をとっていた。だがエッジコンピューティングでは、ユーザーが利用するネットワークの近くに「エッジサーバ」と呼ばれるサーバーを置き、さまざまな処理をエッジサーバに分散して処理させる仕組みとなっている。

ユーザーの端末からエッジサーバまでのネットワーク的な距離は、通常のクラウドよりも近いので、その分遅延も少なくなる。そこでモバイルのコアネットワークにエッジコンピューティングの概念を取り入れ、基地局などユーザーと近い部分にサーバーを配置して分散処理を図り、コアネットワーク側の負担を減らす「モバイルエッジコンピューティング」を導入することで、5Gでの低遅延実現が進められているわけだ。

5Gではモバイルのコアネットワークにエッジコンピューティングの概念を導入することで、さらなる低遅延を実現しようとしている

5Gの要素の中でも、低遅延は高速・大容量通信などと比べると一般ユーザーにしてみれば重要性が低い、地味な存在に見えるかもしれない。だが先に触れた遠隔操作の事例などを見ても分かる通り、今後のIT技術の発展を考える上で欠かすことのできない、非常に重要な要素なのだ。

それだけに、5Gによる低遅延の実現には、自動車業界を中心として多くの産業から大きな期待がかけられている。低遅延によってモバイルネットワークがもたらす新しい価値に、一層注目しておきたいところだ。