カリフォルニアの大気汚染対策を発端とする環境規制
ZEV規制は1990年代初頭にカリフォルニア州で法案として生まれ、それが修正を経ながら今日に至る。当初はカリフォルニア州の大気汚染を改善するための排ガス規制が目的だった。そこで排ガスゼロ、すなわちゼロエミッションという言葉が使われた。
当時のカリフォルニア州には公共交通機関の鉄道がなく、移動はほとんどが自家用車で、ほかにバスがある程度だった。そして、東に控えるシエラネバダ山脈によって海風が抑えられ、大気が平野部の市街地に滞留する地形である。クルマの排ガスはそこに停滞し、カリフォルニアの強い日差しによって光化学スモッグを起こす。1990年代初頭、カリフォルニア州で夜間に霧かと思った靄が排ガスによる光化学スモッグで、それが地上に降りてきていたり、海の上にスモッグが停滞していたりする状況を私は体験している。それほど大気汚染は身近だった。
そもそも、エンジンの排ガス対策を促す1970年代の「マスキー法」誕生も、カリフォルニア州の大気汚染を発端としている。
相次いでEV開発に乗り出した自動車メーカー
ZEV法案が出された段階で、米国ビッグ3はもちろん、トヨタ、日産自動車、本田技研工業が相次いでEVの開発に乗り出した。しかし、当時のバッテリー技術では実用に適した走行距離を達成したEVを市販するまでに至らず、規制内容はHVも受け入れるなど、たびたび修正を受けながら、徐々に規制強化の動きとなってきているのである。
そして、当初は販売台数の多い大手自動車メーカーのみが対象だったが、中堅以下の自動車メーカーも対象とするように強化され、今日を迎えている。排ガスゼロは、気候変動を抑制するための二酸化炭素(CO2)排出ゼロにも通じることになる。
2018年には販売する新車の4.5%をZEVとし、翌2019年には7%に、以後は毎年その台数が増えて、2025年には22%にまで比率を高めなければならないというのが、ZEV規制の行程だ。「その数字は自動車メーカーが生産すればいいというのではなく、販売台数であるところが厳しい」と、藤原氏も表情を引き締める。
また、このZEV規制はカリフォルニア州だけではなく、米国東海岸の7つの州(コネチカット州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州)にも広がる動きになっているのである。