同時接続数拡大の基礎となる「NB-IoT」

では一体、5Gではどうやってそれだけ多くの接続数を実現しようとしているのだろうか。その方法は、現在の4Gに向けて導入が進められている、IoT向けの通信方式から見て取ることができる。

そもそもIoT機器は、スマートフォンのように頻繁に通信したり、動画のような大容量コンテンツをストリーミング視聴したりするなど、高速・大容量通信が求められることがほとんどない。既に存在する、自動販売機や電気・ガスなどのスマートメーターに導入されている通信モジュールの例を挙げると、これらは1日に1~数回程度、売上や使用量などを送信するだけでよく、通信する容量や時間が非常に短くて済むのだ。

そうしたことから5Gでは、スマートフォン向けの高速・大容量通信環境だけでなく、IoT機器向けの低速・小容量の通信環境も提供することにより、同時接続数を増やそうとしているのだ。そうしたIoT向けの通信規格として、昨年モバイル通信の標準化団体「3GPP」で仕様が定められたのが「NB-IoT」であり、5GでもこのNB-IoTをベースとしてIoT向けの環境作りが進められると見られている。

NB-IoTはLTEのネットワークを使いながらも、あえて200kHz程度という非常に狭い周波数帯域を用い、通信速度は最大で下り26kbps、上り62kbps程度と非常に低速な、IoT専用の規格だ。通信速度こそ遅いが、使用する帯域幅が狭ければ、それだけ多くの機器に帯域を割り当てられ、同時に多数の機器を接続できるようになるわけだ。

他にもNB-IoTは、既存のLTEネットワークでも利用できる仕組みであることから、全国くまなく広いエリアをカバーできるメリットがある。しかも通信間隔を長くすることで消費電力も抑えることが可能で、バッテリーを充電することなく10年程度は通信ができるなど、IoT機器での利用に向けた多くのメリットを持つ。それゆえ今年以降、NB-IoTの導入は世界的に進むと見られている。

ソフトバンクは、5Gの技術を先取りして活用する「5G Project」の一環として、NB-IoTなどLTE向けのIoT通信規格を、今年の夏より順次導入することを打ち出している