どんな商品を作るのか

作ったものを売る企業から、顧客が求めているものを理解して「それだけを売る」(田中氏)企業へと変貌を遂げるユニクロ。まず気になったのは、多くの顧客が求める最大公約数的な商品が増えるのか、求める顧客は少数でも面白い商品であれば作るのか、というポイントだ。これについて柳井氏は「両方ともできると思う」と即答。顧客の声が工場に届く仕組みを作れば、ロットに関係なく、求められている商品を作ることが可能との考え方を示した。

では、顧客が求めるものが、ユニクロとしては作りたくない商品だった場合はどうか。例えば、3回着ればダメになってしまうようなシャツでもいいので、100円くらいで売って欲しいというような要望が多かった場合だ。それについて柳井氏は、「(ユニクロが掲げる)LifeWearというコンセプトは変わらない。ベーシックで、トラディショナルで、今の流行を取り入れた商品という範疇は変えられない」と回答。顧客の声に応えることと、アパレルメーカーとして商品の質を担保していくことは両立できるというのが同氏の見立てだ。

ユニクロが有明に建設したオフィス兼物流センター「UNIQLO CITY TOKYO」は、同社が進める改革を象徴する存在。5,000坪のオフィスには商品づくり、マーケティング、物流など、上流から下流までの様々な行程に関わる社員が勤務する。新商品の投入サイクルを上げるには、部署横断の仕事を進められる体制が不可欠だ

顧客本位のビジネスが深化

筆者は以前、ユニクロが始めた「セミオーダージャケット」の取り組みを取材したことがあるが、その際に見たのは、マスブランドであるユニクロが、一人一人の顧客に寄り添ったビジネスを展開しようと方法を模索する姿だった。有明プロジェクトの説明を聞いて、同社が顧客本位のビジネスモデルを深化させようとしていることが確認できた。

情報製造小売業への転換。壮大な構想ではあるが、うまくいけばユニクロは大量生産、大量消費のファストファッションから脱却し、何か新しい小売業の姿を提示してくれる存在になるかもしれないと感じた。