高性能PCがIoTの司令塔に
次は、ホームコンピューティングの未来だ。FCCLが目指すのは、高性能PCをホームハブにする方式。センサー情報や音声情報をクラウドに送信せず、家庭のPCで処理することで個人情報が外に漏れないというメリットがある。
具体的には、家の中に各種センサーを取り付け、家の内外の状況、家族一人ひとりの状態をPCが常に認識している世界をイメージしている。家族のスケジュールを把握しているので、例えば、インターネットから電車の遅延情報が入ってきた場合、PCが「○○に何時に到着するには、○時発の別の路線に乗る必要があります」と、人間に先回りして教えてくれる。
FCCLが開発しているホームコンピューティングは、個人情報の保護にも細心の注意を払っている |
カメラやマイクでユーザーの状態を把握し、ネット情報と掛け合わせて最良の行動を教えてくれる「AIコンシェルジュ」を開発中 |
画像認識技術で家族の顔を登録しておけば、留守中に不審者が侵入した場合にも瞬時に異常を認識。PCが大音響で警告を発するとともに警備会社に通報することもできる。子どもが学校から帰ってきたらセンサーが認識して親にプッシュメールを発信したり、子どもが触ると危ない機器を自動でロックしたりと、ユーザーが意識することなく安全・安心で便利な暮らしを手に入れられるのである。
スムーズな通信と機器管理で授業が進む
教育現場向けの「スマートルームソリューション」も紹介しよう。富士通も専用タブレットなどを多数納品しているICT教育の現場では現在、多くの課題が噴出している。一つは不安定な通信環境。授業中、30~40台のタブレットが一斉に通信を始めると、処理が遅延したり通信自体が切れたりして、授業に支障をきたすことが多々ある。
そこでFCCLでは、無線LANアクセスポイントを内蔵した「エッジコンピューター」を開発。エッジコンピューターに事前に教材をダウンロードし、授業開始とともにタブレットに一斉配信する仕組み構築した。
セキュリティにも配慮している。エッジコンピューターとタブレットの間はワンタイム認証チケットで結ばれ、外部から偽装したMACアドレスで侵入することを防ぐ。ウイルス対策も万全だ。タブレットにはOSやCPUから独立した独自プロセッサー「EastChip」を搭載しており、これがエッジコンピューターと常に連携。通常と異なる動きをするタブレットを発見した場合、基幹ネットワークとの接続を遮断し、タブレットへのウイスルスキャンを開始する。
EastChipはOS起動前のエラー情報、ノートPCのパネル開閉、バッテリーの温度・充放電量など多くの端末情報を収集してエッジコンピューターに送信するので、教師やサポート業者はタブレットのエラーをいち早く発見したり、予測したりできる。システムトラブルで授業が遅れたり、児童が授業に置いてけぼりにされて寂しい思いをすることもなくなる。
アンケート機能もある。児童たちがタブレットに書いた解答が画面で一覧でき、ディスカッションのきっかけになる |
このタブレット収納ラックは、エッジコンピューターとバッテリー情報をやりとりする。上段が新開発の収納方式。ケーブルが邪魔にならず、小さい児童でも簡単に出し入れできる |
35年前の「FM-8」から始まり、世界で初の全モデルCD-ROM搭載を果たした「FM TOWNS」など、時代の最先端を進んできた富士通のPC事業。PCだけでなく、ワープロの「OASYS」やニフティサーブなど、富士通のITは常にわれわれのそばにあり、勉強に仕事に、知識の蓄積に、交友関係の拡大にと、さまざまな面でサポートしてくれた。今、PC市場は転換点にある。PCはこれまでのようにスタンドアローンで使うものではなく、さまざまな機器をIoTやAIの技術でシームレスにコントロールし、ユーザーに意識させることなく生活すべてをサポートするエージェントとなる未来が見えてきている。「Made in 出雲」がその中心となるのか。これからも富士通に注目していきたい。