さて、この両備グループだが、全国に存在感を強めている。
もちろん同社の収益の基盤となるのは岡山県で、「岡山電気軌道」をはじめ、バス、タクシー、そして瀬戸内海のフェリーなどを運営する。それだけでなく、和歌山電鐵をグループ化。ネコの駅長「タマ」で一躍名をはせた鉄道だ。タマ駅長だけでなく、水戸岡氏が手がけた「いちご電車」でも知られている。
さらに今年に入ってから、東京と大阪を結ぶ完全個室の深夜高速バス「ドリームスリーパー Ⅱ」を導入。多くのメディアに採り上げられた。
余談だが、筆者はこのドリームスリーパー Ⅱの内覧会の際、両備グループ代表 兼 CEO 小嶋光信氏に「ドリームスリーパーは流行の豪華列車を意識しているのか」と問いかけたが、その答えは「意識していません」というものだった。だが、豪華絢爛な安宅丸の内装をみせられて、やはり同社は“豪華路線”を模索しているのではないかと思えた。
大型客船を造船
さて、両備グループが岡山県や瀬戸内海以外にも存在感を強めていると前述したが、安宅丸もその表れといえる。というのも、この安宅丸は「御座船 備州」として、瀬戸内海を中心に西日本でのクルージングに用いられてきた。
それが、7年前に東京湾に廻送。そして現在、東京湾唯一の“和船風大型クルーズ船”として活躍している。岡山県や瀬戸内海以外でも、両備グループが進出している、その象徴ともいえるのではないだろうか。
さて、両備ホールディングス CEO 小嶋氏によると「30年経ったとはいえ、まだ安宅丸は現役。あと20年は運行できる」とはなした。そして、8~9,000トンクラスの客船を建造中であることも明かした。
安宅丸自体が486トン、総長49.7メートルだ。それに比べると、桁違いに大型な客船となる。小嶋CEOによると、なんとか2020年東京五輪までに、造船および艤装をまにあわせたいというが、ハナシを聞いてみると、どうやら五輪の年からずれ込みそうだ。
家光の時代に造船された御座船だが、安宅丸は維持費などの問題で解体されたが、天地丸はその後も残った。だが、幕末を迎えた際に、来港した“黒船”の偉容に幕府はあらがえないと判断し、廃止された。