クルマで使えるAIとは?

Nuance CommunicationsのPrincipal Product Manager for Artificial Intelligence Technologies Automotive Business Unitを務めるMichael Kaisser氏

最近のビジネスシーンにおいて、聞かない日はないというほどの勢いを持つ「人工知能(AI)」という言葉。すでにさまざまなサービスに活用されており、クルマも例外ではない。多くのカーナビゲーションは、タッチパネルやダイヤル(コマンドコントローラ)を用いて住所や電話番号を入力するが、音声入力に対応するものも増えてきている。近年は、単純に住所などを音声で入力するのではなく、ナビと対話するような形で行き先を設定したりもできるようになってきた。

そうしたクルマの音声入力を支援しているのがNuance Communicationsが提供する音声認識プラットフォーム「Nuance Automotive Assistant」であり、クルマに特化した音声アシスタントとなる。最近では、スマートフォン(スマホ)でもナビゲーションが可能であり、音声認識もしてくれるが、クルマの中で直感的に利用しようと思うと、音声で指示をして、タッチパネル上に候補を出してもらい、それを実行という手順は、特に走行中の場合、事故の危険性を高める行為となる、と指摘するのはNuance Communications DeutschlandでAI技術の車載分野への適用を担当しているマイケル・カイザー(Michael Kaisser)氏である。

「運転中、目的地付近の駐車場を探したいといったことは良くあるが、手や目が運転によりふさがっていることを考えれば、こうしたニーズは音声で解決する必要がある。しかも、目的地からどれくらい離れているのか、料金はいくらか、なども対話でやり取りする必要がある。重要なのは、ユーザーごとに最適な結果を提供できるという点であり、ユーザーによっては高くても近いところ、ちょっと離れていても安いところ、ちょっと離れているの"ちょっと"とはどの程度か、といったやり取りができる必要がある」と同氏は説明する。

スマホでのナビのように、タッチパネルで操作する作業は運転中には事故の危険性などを考えれば必ずしも最適な解とはならない。視線を動かさずに済む対話によってすべての作業が終わる音声入力が最適化とKaisser氏は説明する

AIには、こうした対話のやり取りの実現が求められるが、同氏はもう1つ重要なポイントとなるのが「ナレッジソース」だと指摘する。つまり、この場合は駐車場のデータベースと、さまざまなデータベースを組み合わせて、ユーザーごとの最適な答えを導くための土台を構築することが求められる。「これを実現するためには、ユーザーにとって一番何が正しい選択肢なのかをAIが学んで、ユーザーの嗜好や特定のガソリンスタンドの会員であるといったことを学ぶ"パーソナライゼーション"と、何をユーザーは重視しているのか、といったことや、駐車場に行く途中で渋滞が発生していないかといった状況の理解も含めた"文脈理解"の2つの要素が重要となる」とのことで、同社では「スマートインタラクション」「パーソナライゼーション」「文脈理解」「ナレッジ」の4つにフォーカスを当てて、車載向けAIとして提供することを目指した開発を進めているという。

Nuanceが開発を進める4つのAI技術(機能)