大阪大学石黒研究室とドワンゴ、パルコは共同で、世界初となるアンドロイドをアイドルに育てる共同企画「アンドロイド『U』育成プロジェクト」を発表した。ロボットがビジネスシーンや生活の場に進出しつつある中、リアルな人型ロボットによる「アイドル」は果たして誕生するのだろうか。
ユーザーとともに育つアンドロイドアイドル
大阪大学の石黒浩教授は人間と関わる人型ロボットの研究者であり、特にリアルなアンドロイドの作成では世界的な研究者の一人だ。これまでにも自分自身を含めたさまざまなアンドロイドを開発・発表してきた。今回のプロジェクトにおけるアンドロイド「U」(ユー)もまた、石黒研究所の手による女性型アンドロイドだ。同プロジェクトではアンドロイドアイドルのことを「ANDROID」と「IDOL」という単語を合わせて「ANDROIDOL」という造語で読んでいる。
「U」はシリコン製の皮膚と精巧な表情メカニズムを持ち、実在の人間のように瞬きしたり、表情をわずかに変えながら静かに微笑んでいる。基本的に動きがあるのはトルソー部分だけで、実在のアイドルのように踊ることなどはできないが、パルコ店頭でのメージガールやファッションブランドとのコラボレーション、一日店長やインフォメーションスタッフとして働くことが計画されているという。
ユニークなのは知性にあたる人工知能(AI)の部分で、ここはドワンゴが運営する「ニコニコ動画」においてユーザーと交流させ、ユーザーのコメントを対話システムの学習素材として利用していくという。未熟な「U」のAIが自律型の対話システムとして成長していく様自体をエンターテインメントとして公開されることになる。いわばアイドルとしての成長をユーザーとともに楽しもうというわけだ。
発表会の会場では、中継を見ていた視聴者の「ぐぬぬ」という単語を妙に気に入って繰り返し呟いていた「U」だが、複数の視聴者からの発言のうち処理しやすいものを選択して学習できる余地があること、またフィルタリングもある程度されているということで、妙な言葉遣いばかりを学習して、デスメタルやパンクロックの似合うアイドルにはならないで済むようだ。
いずれにしても、アイドルとしての活動の場に即した言葉遣いなどを率先して学習することで、よりファンが親近感を感じやすい存在に仕上がっていく。こうした遊び心のような試みも、もともと「人に酷似したロボットが人間の心理に与える影響」を研究している石黒教授の社会実験的な側面に合致していると言っていいだろう。