クーポンの多発が招いた不公平感
単価アップに至るまでには紆余曲折があった。マックは以前、来店者の増加を狙って、駅前や店舗付近でやみくもにクーポンを配布していた時期がある。この施策は確かに来店者の増加につながったが、一方で客単価の減少も引き起こしてしまった。また、クーポンの有無による価格差により、来店客に不公平感を抱かせてしまった側面もある。
また、ファンの来店促進を狙って、アプリに格安のクーポンを多量に配信したことも同様の結果を招いた。レジ前で紙のクーポンを手にする顧客や、スマートフォンの画面を操作している光景が以前は多く目についた。
価格の適正化は成功?
売上高を向上させるための方策としては、単価アップ、来店者数アップ、リピーターの維持・増加、新規顧客の獲得が一般的だ。単価を上げ過ぎると、顧客は嫌悪感を抱いて他店へと流出してしまう。顧客が納得できる妥当な値上げを模索することは、実は難しい。
そこで、マックはまず、一気に単価を上げた。その後、顧客の反応や他社の動向を見ながら、単価の引き下げ調整を行った。ファンから非難の声も上がるなか、マックは価格を流動的に操作しながらも、結果として、最適な金額帯のデータを蓄積していった。
スマホアプリやモバイル環境の整備により、顧客の声を素早く拾い上げる仕組みを構築できたことも顧客の考えを知る一助となった。KODOがその代表例だ。このアプリは店内のモバイル環境下でなければ送信できない仕組みだが、一方で素早く顧客の反応を汲み取ることができる。従来の特典はファンという多数に配信されていたが、KODOの導入により、「お客様の声」を寄せてくれた特定多数に配信することが可能な仕組みへと進化した。