食べ歩きにぴったりな和菓子屋が豊富!

和菓子屋めぐりのそのひとつは、創業昭和27(1952)年の「釜人鉢の木」。和菓子が並んだその様子は、もう見るからに「食べ歩きにもってこい! 」なお店である。

「まねきもち」(210円)。餡としては珍しい虎豆を使用していて甘さ控えめ。店員さんは「福を招くという意味でしょうね、うふふふふ」と茶目っ気たっぷりに笑う

パッケージの図柄とネーミングに引き寄せられた「まねきもち」(210円)は、"もち"となっていながら餅は入っていない。モチモチしているのは、実は皮である。しかし、それを知らなければ「お餅が入っている」と勘違いするほどの餅っぽさがある。山芋と餅粉を材料にしているため、そのような食感が生まれるのだそうだ。

また、この季節に恋しくなる「さくらもち」(210円)には桜の花の塩漬けが添えられていて、大変春らしい。さくらもちは桜の散る頃までの販売とのことなので、4月下旬あたりまでだろうか。

桜の花がかわいらしくのぞく「さくらもち」(210円)

続いて訪れた「うさぎや」は、たい焼き屋のともえ庵と同様、行列のできる和菓子屋である。実はここはパールセンターから少しはずれているのだが、入り口ゲートの近くにあるため、ここで紹介したい。

店構えからして老舗の風格があるうさぎやで見つけたのは「うさぎ饅頭」(160円)。一口サイズの小ぶりで白い饅頭に、うさぎの顔が付いている。この店で特に人気なのはどら焼きとのことだが、やはりうさぎやならうさぎ饅頭を買うべきと判断した。そのほか、あんみつなどの甘味を店内で食べることもできる。

雪うさぎのような真っ白い「うさぎ饅頭」(160円)。顔は1匹ずつ手で描くのだそうだ

かわいそうだが、割ってみたらこしあんがぎっしり

このほかにも、魚料理の「おさかな食堂」では日曜日の16時~限定でマグロメンチカツ(210円)を店頭販売していたり、行列の絶えないミートソーススパゲティ専門店「ミート屋」があったりと、パールセンターはなかなかにグルメが豊富である。七夕まつり、ジャズの祭典の「阿佐谷ジャズストリート」、ハロウィンフェスタや仮装コンテストなどのイベントも頻繁に行われているため、そのような機会に訪れてみてもいいだろう。

アーケード終点にある分岐点から右は引き続きパールセンター、左に行くとすずらん通り。食べ歩きはこのあたりまでとなる

昭和29(1954)年から始まった「阿佐谷七夕まつり」は東京7大祭りのひとつとのこと(写真:阿佐谷商店街振興組合)

昭和32(1957)年の七夕まつりの様子。トラの顔が微妙に怖い(写真: 阿佐谷商店街振興組合)

文豪たちにも愛された街・阿佐ヶ谷

また、パールセンター入り口に向かって左にある細い道は「阿佐谷一番街」という商店街である。 食べ歩きというよりも飲み屋などの飲食店が多い。夜はパールセンターに代わり、このあたりが街のメインになるのだろう。荻窪~阿佐ヶ谷界隈には、井伏鱒二、与謝野晶子、太宰治など、多くの文豪が住んでいたという。彼らもこのあたりの飲み屋で集い、文学談義などを繰り広げたのだろうか。

のんびりとした風景の残る阿佐ヶ谷の駅周辺

駅の北口にも「北口アーケード街」や「スターロード」などの商店街があるが、食べ歩きのできる店は多くないようだ。北口から徒歩2分程度のところにある阿佐ヶ谷神明宮は、能などの伝統芸能の奉納を行うほか、阿佐谷ジャズストリートの会場ともなるという一風変わった神社のようだ。散策ついでに立ち寄ってみてはいかがだろうか。

落ち着いた雰囲気の漂う阿佐ヶ谷神明宮。ここでジャズが演奏されるとは驚きである

※価格は全て税込

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。