口周りの筋力の低下
口周りの筋肉の機能が低下し、口が開いてしまうケースもある。口唇を閉じる動作と関係があるのは「口輪筋」と呼ばれる筋肉。 口輪筋は口唇の周りを輪状に囲っており、唇をすぼめるときなどに使う。口輪筋の働きが弱いと口唇が開き、自然と口呼吸になる。口呼吸をしている期間が長年にわたると、口輪筋が萎縮して唇が縮み、前歯が見えるようになってしまうとのこと。
そのような症状の人には、専門的な「MFT: Myofunctional therapy(口腔筋機能療法)」や手軽にできる「あいうべ体操」がお勧めだと今村医師は話す。
「MFTは歯科全体に普及している機能訓練法です。口呼吸に対しては口輪筋や口唇、鼻呼吸、舌挙上などの各種トレーニングを行います。患者さんごとの機能的な問題へのアプローチとして、スタッフが歯科医師の指示のもとレッスンプログラムを作成して患者さんに指導。そして患者さんは自宅で訓練や習慣化を行うという行動変容療法です」
「ガムをかんで鼻呼吸の癖をつける」「食事時に口を閉じて咀嚼(そしゃく)をする。その際、舌先をいつも上あごの前歯の後ろのスポットに置くようにする」「一日のうちで、意識的に口を閉じて鼻呼吸の練習をする時間を設ける」なども鼻呼吸への矯正に役立つ。
MFTを行うことでQOLの向上を目指せるとともに、患者自身が健康的な生活が一日でも長く続けられるよう、ライフスタイルを見直すきっかけにもなるという。
もう一方の「あいうべ体操」は、福岡県の内科医・今井一彰氏が提唱する口呼吸改善に役立つ簡単な口の体操だ。口周りの筋肉を動かし鍛えることで、口呼吸の矯正を目指す。
まず「あー」と口を大きく開き、次に「いー」と口を大きく横に広げる。それから「うー」と口を強く前に突き出し、最後に「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす。
この工程を1セットとし、毎日30セットを目安に継続していくと口呼吸の改善が期待できる。こちらは特別な用具も必要なく、今日からすぐにできるメリットもある。
まずは原因の究明から
口呼吸をするとウイルスがのどを経由し直接体内に入るため、鼻呼吸の人に比べて風邪などの感染症にかかりやすくなる。今のように寒い時期は、口呼吸による被害が最も甚大なシーズンと言えるかもしれない。呼吸をする度にこれら感染症の罹患リスクが増大するのも理不尽な話だ。
口呼吸はきちんとした治療や対策を行えば、改善されるケースがほとんど。毎日のように行う呼吸だからこそ、きちんと正しい形でするべき。口呼吸の自覚がある人は、まずは原因をきちんと究明するところから始めてみてほしい。
※写真と本文は関係ありません
記事監修: 今村美穂(いまむら みほ)
M.I.H.O.代表、M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長、MIHO歯科予防研究所 代表。表参道デンタルオフィス 矯正歯科。日本歯科大学卒業、日本大学矯正科研修、DMACC大学(米アイオワ州)にて予防歯科プログラム作成のため渡米、研究を行う。1996年にDMACC大学卒業。日本矯正歯科学会認定医、日本成人矯正歯科学会認定医・専門医。研究内容は歯科予防・口腔機能と形態及び顎関節を含む口腔顔面の機能障害。MOSセミナー(歯科矯正セミナー、MFT口腔筋機能療法セミナー)主宰。