2017年でデビュー10周年を迎える女優・川口春奈(22)。長崎県・五島列島出身で、親友が応募したモデルオーディションで芸能界の道に進むことに。中学3年生の時に上京し、「大人に囲まれて」仕事をしながら実力をつけ、荒波をただひたすらに泳ぎ続けてきた。初共演の山崎賢人とW主演する映画『一週間フレンズ。』(2月18日公開)は、彼女だからこそ深く心に投げかけてくるメッセージがある。
あの日あの時、大切な人との何気ない一時を自分ははっきりと覚えているだろうか? 自分にとっての大切な人とはどのような人なのか? そして、その人のことを今、本当に大切にできているのか?
高校2年生の長谷祐樹(山崎)は、同級生・藤宮香織(川口)に「友達になってください」と声をかけるが、香織は"友達のことを一週間で忘れてしまう"という記憶障害があったため、長谷を拒み続ける。それでも長谷は諦めきれず、毎週月曜日、記憶がリセットされるたびに香織に会いに行き、交換日記を始めることで少しずつ距離が縮まるが――。
「あまり友達がいないんです」とありのままの自分を伝える川口。周囲の言葉に耳を傾けるだけでなく、"記録"し続けてきたのは、子どもの頃から大人と仕事する中で備わった生きる術だったのだろう。10年来の友人と続けている交換日記も、「大切な人」と向き合う真摯な気持ちに他ならない。今回のインタビューでは、仕事との向き合い方から彼女の様々な一面が見えてきた。
「記憶喪失」を演じるということ
――こういう男女共学の青春物語を見るとうらやましく感じます。
そうなんですね(笑)。友情や家族愛がメインになる作品です。恋愛要素もありますが、人間関係の部分が学生目線で描かれているので、学生だけでなく、大人の方々が観ても心に刺さるんじゃないかなと思います。
――事前に出されていたコメントでは、「気持ちの変化や表情や仕草、細かいところまで丁寧に演じようと思い没頭しました」とありました。
もちろん原作は読みましたが、原作がある実写作品の場合は毎回そこに囚われないように意識しています。ビジュアルはしっかりと寄せますが、映画には脚本があるのでそちらの方に集中するように。演じる上で、今回はほとんど原作を意識していません。
――記憶がなくなっていく様を演じるのは大変だったのでは。
難しかったです。自分が表現するところは想像の部分でしかなくて、自分では分からないというか経験していないから、本当の意味で分かることができない。でも、記憶を失う方々の気持ちを考えてそこまで自分の感情を持っていかないといけない。それに、「友達のことだけを忘れる」という設定自体も特殊です。そこをどういうふうに表現すればいいんだろうと悩みました。
監修の先生が入ってくださっていたので、カウンセリングのことや、忘れたことを思い出すためのテストの話を聞いたりして参考にさせていただきました。
――そういう準備は演じる上でもプラスに。
はい。やっぱり、知らないと分かってあげられない。自分の知らないことは、しっかり事前に聞くべきですし、そこを想像だけではやりきれないです。そういう監修の方のお話を聞くと、1つの要素として少しだけ演じやすくはなります。
――山崎賢人さんとの初共演。「長谷くんにしか見えなくなって自分の感情を勝手にコントロールされてるかのようで不思議な時間」だったと。
自分が良いお芝居をするためには、もちろん相手の方からも影響します。山崎さんは初共演でしたが、そういう意味ではガチっとハマったような感覚でした。お互い多くは語らないし、役のことも話し合ったりはしないんですが、いざ本番となると、そこに長谷くんと香織が本当にいるような感覚になれる。彼に引っ張ってもらった撮影でした。
――初めて共演される時、何か心がけていることはあるんですか。
全くありません。でも、相手のことを知りたいので、できるだけ積極的にコミュニケーションは取っています。同年代が多かったのでみんな自然と仲良くなって、すごくいい雰囲気でわきあいあいとした現場でした。
会えなくても大切な友達
――「いつの時代もきっかけを作ってくれるのは友達だ」という言葉が印象的だったのですが、川口さんにとってこの言葉が当てはまる方はいますか。
あまり友達がいないんですよ(笑)。たくさんいる方ではないので、そういう関係はうらやましいなと思います。友達だけではなくて、仕事の人であっても、家族であってもそこまで自分をさらけ出せる関係って、すごくすてきですよね。
――川口さんといえば、出身地の長崎・五島列島の親友が『ニコラ』のオーディションに応募したことがデビューのきっかけ。真っ先にそのことを思い出しました。
私の親友で幼馴染です。長い間、離れてしまっていて、自分が東京に出てきて何年も経ってしまっているのでなかなか会うことができません。お互い、今は別々の道を歩んでいますが、会えなくても大切な存在です。
――逆に自分が影響を与えたことは? 誰かに感謝されたり。
いつも自分が感謝している方です。この環境もそうですし、きっかけを作ってくれた幼馴染も。そもそもその子がいなければ、私はここにいません。両親や家族、いろいろな人がいて私はここにいます。2017年はデビュー10周年になりますが、ここまでいろいろな人がつないでくれていると、最近すごく思います。
――ファンとのふれあいの時によくブログを更新されていますね。やっぱり、支えられてると実感が?
応援して作品を観てくれる人がいないと成り立たない仕事。そういう方たちがいての「自分」なので。ファンイベントやブログをこれからも大事にしていきたいです。