1カ月強使ってみたが、「ウイルスバスター for Home Network」が特別に動作するという事例はあまりなかったものの、外部ネットワークからの攻撃に関してはいくつか警告が表示された。

自宅には公開Blogサーバを設置しているが、これには数回攻撃があったようだ。また、家庭用NASへの攻撃も見つかった。

BlogサーバはLinuxをインストールして運用中。セキュリティパッチや更新を随時行い、不必要なサービスやポートも塞いで防御しているが、家庭用NASの場合アンチウイルスソフトなどを入れるのは難しい。特に、攻撃を受けたNASは日本語バージョン製品のアップデートが販売開始以降行われていないため、脆弱性をついた攻撃があったとしても対処が難しいだろう。

ネットワーク攻撃に関するレポートは有用だ。「debian」は自宅で動いているBlogサーバだが、複数個所からのアタックにさらされている事がわかる

「詳しく見る」をタップするとこのような説明画面になる

家庭用NASも外部からのアタックを受けていた。スマホからの外部利用も可能なので見落としていた脅威だ。この製品は発売開始からファームウェアの更新がないことがわかって少々困っている

「ウイルスバスター for Home Network」は、PCやスマホのウイルスバスター、つまりエンドポイント単体の防御製品ではないが、テレビやIPカメラ、NAS、ネットワークスピーカーなど、ネットワーク接続機能のある家庭用機器への防御や、攻撃の実態を知るという意味では非常に良い製品だった。

「ポケモンGO」がログイン不能に? 今後のブラッシュアップに期待

一方で、製品の細かなブラッシュアップの必要性を感じた。1ページ目で書いたように、自動判別されるカテゴリが少ない事以外にも、筆者の環境では取り付けてから数日後、「ポケモンGOのログインができなくなる」という症状に見舞われた。

「ポケモンGO」がインストールされているスマホを自宅のWi-Fiに接続すると、アプリにログインできなくなり、Wi-Fiを切ってLTEで接続すると問題がない。一旦ログインするとWi-Fi接続しても動作するので、ログイン処理時に問題が発生していると考えられる。

トレンドマイクロによると、ユーザー通知なしの遮断は行っていないとのことだが、実際には遮断されているとしか思えない動作だった。結局、この問題は「ウイルスバスター for Home Network」をネットワークから外して再接続することで解消した。

一般論でいえば、「ポケモンGO」を家の中だけで行うという事はなく(筆者の場合「自室からアクセスできるポケストップでログインボーナスを稼ぐため」だった)、実損害はないと思う。ちなみに、同じ会社がリリースしている位置情報ゲームアプリ「Ingress」に関してはゲーム判定されなかった。

また、Skypeを使っていた時間に、一切使っていないLINEやPinterestを使っているというログが表示されたり(アプリ判定ミスだと思われる)、中国のショッピングサイト名が別の表記(利用したのは個人向けの「Aliexpress」で表示は「Taobao」)で、不正アクセスの可能性も考え戸惑うといった状況に遭遇した。

これらの問題が発生するのは、アプリや端末を直接監視しているのではなく、端末からのインターネットへの通信で全てを判別しているためだ。製品の利用者が増え、事例が増える事で改善されると思うが、現時点ではやや不満だ。この辺りのリクエストや対応状況に関して、サポートページや購入前ページなどで説明があった方がよいと思う。

特定アプリの判断も「大体あってる」でややピントズレのところがある。「Taobao」は使ってないので首をかしげたが、「alibaba」系の個人向け通販「AliExpress」を使っていた

「Line」や「Pinterest」も使っていない。これはSkypeを誤認識したようだ

「ポケモンGO」は認識するが、筆者が現在一番遊んでいる「Ingress」がゲームとして認識されていない……

無防備になりがちな家庭内ネットワーク機器を手軽に守る

「ウイルスバスター for Home Network」は無防備になりがちな家庭内ネットワーク機器を可視化し、防御するという意味では意義のある商品だ。

転送速度の低下やラグに関しては目立った変化を体感せず、従来PCやスマートフォンにセキュリティソフトを入れているユーザーも、「自宅内での多層防御」という一歩進んだ環境が得られるというメリットがある。攻撃元IPアドレスや攻撃手法の解析にかんしてトレンドマイクロは長い経験があり、これがエンドポイント向けの専用ソフトなしで生かせるのは素晴らしい。

また、SIMを付けて持ち歩くスマートフォンにはセキュリティソフトを入れていても、リタイヤして家庭内の情報端末として使っているスマートフォンやWi-Fi接続のみのタブレットに対しても一定の保護が期待できる。セキュリティに敏感で機器が多いホームユーザーにはおススメできる。

一方、アプリやサイトの認識精度は現状、今一歩のところもある。ユーザーの声に今後どう応えるのか、今後を楽しみにしたい。