ビジネス的な成功はあるか
LINE WORKSは無料サービスではなく、アカウント単位で利用料金の月額/年額プランが用意される(最初の1カ月はお試し期間ということで無料で利用できる)。また、利用可能なサービスによって3つのコースが提供される。提供は認定パートナーを通じての販売となり、これらのパートナー企業が得意とするサービスが付加価値として付くことになる。無償ではない代わりに、高度なセキュリティやサポート体制が用意されていると考えれば、妥当な線だろう。
LINEという強力なブランドを武器にするLINE WORKSだが、メッセージングアプリとしてはともかく、グループウェアとして考えると、主機能をメッセージングによるコミュニケーションに大きく寄せてあることもあり、それ以外の機能はさほど強力だとは言い難い。
たとえば稟議書などをカスタムフォームとして用意してチェックさせたり、グループで画面共有して作業するといった機能は用意されていない。また、いわゆる会議室や掲示板的な機能もほとんどないため、一定のグループ内で複数の話題を効率よく扱うのはなかなか困難だ。WORKS MOBILEとしてデビューから約1年を経過しているわけだが、まだまだ法人内での需要を完全に把握できているとは言い難いという印象だ。
こうした指摘に対し、LINE側は一部の業務処理について、Botを使うことを推奨している。たとえば退勤管理などはカスタムフォームを使うより、Botに話しかけることで処理すればいいという考え方なのだが、クライアントの位置情報などは記録していないため、退勤処理の不正も行えてしまう。
このあたり、発想自体はノマドワーカーやROWEといった最近のワークスタイルの変化などを反映しているとも言えるが、多少ツメの甘さを感じてしまわなくもない。また、ユーザーごと、あるいは全体でのストレージ容量も今の所増強する手段がないため、企業規模や業種によってはあっという間にストレージを使い潰してしまいそうだ。LINE WORKS側の仕様が強化されるまではメッセージング中心と割り切り、業務面では従来のシステムを使いつづける、といった割り切りが必要になるだろう。
LINEというブランドのネームバリューと導入しやすさを武器にビジネス市場に乗り込むLINE WORKSだが、上記のような短所もあり、会社だけでなく、ユーザーからどの程度受け入れられるか、かなり未知数な部分はある。
とはいえ、これを機会に世の中のワークスタイルがPC中心からスマートフォン中心へと変わるきっかけになるかもしれない。少なくとも、ビジネス界においてメール処理にかかる時間は一種の「必要悪」となりつつあるので、これを解消する動きになるだけでも歓迎したい。LINE WORKSがどこまで日本の固定化したワークスタイルに影響を与えられるかは興味深い。