UQ mobile躍進の要因はKDDIの危機感

20~25万というUQ mobileの契約数が、MVNO市場の中で現在どのようなポジションにあるのかは、他のMVNOと比較すると見えてくる。例えばMVNO大手の一角を占めると言われるインターネットイニシアティブ(IIJ)の場合、2月8日に発表した決算の中で、自社が直接提供する個人向け通信サービス「IIJmioモバイル」の回線数が91.2万、MVNEとして他社に提供している回線数は50.1万で、法人向けサービスの契約数と合わせて約171万回線に達したとしている。

それ以外のMVNOを見ても、ケイ・オプティコムの「mineo」は1月に50万契約を突破しているほか、ソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」は、1月31日に38万契約を獲得していることを明らかにしている(ただし通信量500MBまで料金がかからない「0 SIM」の契約数は除く)。また、KDDIが今年買収を完了したビッグローブも、買収を発表した昨年末時点で、契約数は約40万とされていた。

主要MVNOの1つ「mineo」の契約数は1月で50万を突破。そのうちauのネットワークを用いた「Aプラン」の契約数だけでも28万と、UQ mobileより多いと見られる

他にも契約数は公開していないが、NTTコミュニケーションズの「OCNモバイル」や楽天の「楽天モバイル」などがMVNO大手として知られており、いずれもUQ mobileより多くの契約数を獲得しているのは明らかだ。それゆえ現状、UQ mobileの市場における存在感は決して高いとは言えない状況にあるのだが、多くのMVNOはUQ mobileを“脅威”と見ており、強い警戒心を抱いている。その理由はMVNOでありながら、ソフトバンクの低価格ブランド「ワイモバイルブランド」同様、大手キャリアであるKDDIのサブブランドに近い存在となっていることだ。

UQ mobileは元々KDDIの子会社が2015年に開始したサービスだが、この時点ではKDDIも、auユーザー流出の恐れがあることから低価格ユーザー層の開拓には消極的で、UQ mobileのサービス内容もMVNOとしては平凡なものであったことから、存在感を示すことができなかった。だがその後急速に低価格市場が拡大し、NTTドコモの回線を用いたMVNOや、ワイモバイルにauの顧客が奪われるようになってきたことから、KDDIも方針を大きく転換。子会社をUQコミュニケーションズと合併することで、UQ mobileを軸に低価格ユーザーの獲得に力を入れるようになり、iPhone 5sの販売や量販店でのauスタッフとの販売協力など、KDDIがテコ入れを図ることで急速に契約が伸びてきたのである。