テクノロジーばかりではない投資対象
さて、ファンドの投資対象である。一言でいえば、プレスリリースにあるとおり、テクノロジー分野となるが、言葉を真っ向から捉えると、戸惑うことになる。
なぜなら、孫氏が想定するのは、ありとあらゆる産業が再定義されるとみているからだ。孫氏は、IoT、クラウド、AIの発達をもとにした人間の知能を超えるシンギュラリティが30年以内に到来すると見ており、「今後は靴にもチップが入る。そのチップが我々の知性を超えていく。メガネにも入っていく。ありとあらゆるものにも入っていく」としている。
あらゆる産業にテクノロジーがベースとなって入り込み、シンギュラリティーに到達する過程において、様々な産業が再定義されると見ているのだ。ゆえにテクノロジーが対象といっても、投資対象を広げてみるべきである。ファンドの理念は「情報革命で人々を幸せに」であり、それを満たしつつ、テクノロジーの活用が根底にあれば、どうやら投資対象になりそうである。
第1号案件は低軌道衛星通信
これだけではイメージしにくいと思うので、まずは投資対象の"直球案件"から見てみよう。
先日、発表された米国の低軌道衛星通信事業を営むOneWebへの1000数百億円の出資は、ファンドの投資第1号案件(ファンド組成までソフトバンクが肩代わり)となる。同社の事業は、現在の静止衛星よりも、地球から近い(低軌道)の衛星を打ち上げ、地球を覆うことで、低遅延の高速通信を低コストで提供しようというものである。
地球から衛星までの距離が遠ければ、その分、遅延が生じるが、低軌道であれば、遅延は少なくなる。しかも、上空から通信を可能にすることで、地球上のどこでもネットワークの利用ができたり、車にアンテナを搭載することで、コネクテッドカーの推進にもつながるとみている。
変化球案件では、たとえば、バイオテクノロジーの分野。バイオテクノロジーなどはソフトバンクにとって、「投資するには少し遠い案件」としており、ファンドの巨額な資産をもってすれば、成長の芽のある企業に、相応の規模感をもってして投資が可能になると見ているわけだ。AIの発達によりディープラーニングを活用して、DNAの解析や病気の予知などに役立てる。そうした事業会社も投資対象となるという。