9年ぶりにカバーの構造を刷新し、さらに軽く強く
続いて、ThinkPad X1 Carbonで新たに導入されたイノベーションについて、レノボ・ジャパン JDC 機構技術 システム機構設計の潮田達也氏が解説した。第5世代ThinkPad X1 Carbonでは、ディスプレイの狭額縁化を実現した。
狭額縁化はノートPCに限らず、昨今のPCにおけるトレンドの1つだが、ベゼルが狭くなることで、Webカメラやアンテナの配置が課題となる。他社製品ではディスプレイ下部にカメラを設置するケースも多いが、ThinkPad X1 Carbonでは、使いやすさを考慮してこれまで通り、液晶上部の真ん中という「特等席」をキープしている。一方で、配線が問題となる各種アンテナとケーブルは首下に移動することで幅、高さともに削減することに成功したという。
ワイヤレス機能に関してはキーボード上部と手前左右にアンテナスペースを確保し、マグネシウム合金のフレームにガラス繊維強化樹脂のアンテナ窓を付ける設計を採用するなど、大幅な変更が行われた。接続性に関しては通常のフィールドテストに加えて日本、アメリカ、ドイツで念入りにチェックしThinkPad品質を保ったという。
ユーザビリティに関して、クリックパッドの操作音(カチカチ音)が静かな会議室では目立つということで新設計のスイッチを設計し、大幅に操作音を低下させた。
天板のカバーに関しては構造を刷新。従来は強度と弾性率のバランスのためにカーボンプリプレグの中に樹脂製の発泡体を挟んでいたが、今回は中央層に低密度カーボン網を使用し、"フルカーボンサンドイッチ"構造を採用した。これによって、さらなる軽量化を実現し、具体的にはトップカバーで20g軽量化できたという。
また、従来はカーボン板の周囲にガラス繊維樹脂を射出してトップカバーを整形していたが、射出樹脂が冷える際に歪みやそりが発生し、これが歩留まりの低下となっていたという。今回はあらかじめ作成したフレームにカーボン板をはめ込み、そこにガラス繊維強化樹脂を射出することで、射出樹脂量を押さえて歪みを低減。ギリギリいっぱいまでカーボン板が入ることで高剛性化も実現できたという。
カーボン板も従来は厚みが一定だったのに対し、新カーボン板はフチの射出部分の樹脂を考慮して薄くしている。カーボン素材に関しては9年前のThinkPad X300から同じ素材を使用していたので、今回構造、工法を一新することでより軽く美しくなり、製造生産性も向上したことをアピールしていた。
従来のX1 Carbonのトップカバーの部分アップ。茶色に見えるのがカーボン板で、その周囲にガラス繊維強化樹脂を射出していた。カーボン板部がやや狭く、射出樹脂量が多いので歩留まりにも影響を及ぼしていたという |
新しいX1 Carbonではプラスチックのフレームにカーボン板をセットしてから両者を一体化するためにガラス繊維強化樹脂を射出。カーボン板の周辺は樹脂を盛る事を見越して薄くしているので射出する樹脂量も減り、反りの改善にも繋がっている |
最後にレノボ・ジャパン UX&ノートブックSW開発部長の吉山典利氏がソフトウェアの変更としてキーボード配置の一部変更と追加ソフトの変更を紹介。キーボード配置の変更と言っても物理的なレイアウトは変わらず、Fnキーと一緒に押す定義キーを一部見直して、Fn+F12がユーザー定義キーになったことや、従来隠し機能だった機能を明示化。ファンクションキーとメディアキー、CtrlとFnキーを入れ替える機能が加わっている。
ソフトウェアは、Setupプログラムで行っていたデバイスドライバーをINF構成に変更し、Windows Updateの親和性を向上、また一部のLenovoユーティリティをLenovo System Interface Foundationとして統合化したという。