浮かび上がる初代との類似点
キープコンセプトを貫いてきたワゴンRにとって、激変という言葉を使いたくなるほどの進化だった。でも筆者はその裏にもうひとつ、“原点回帰”というメッセージを感じた。
初代ワゴンRがデビューした頃を覚えている人は少ないと思われるが、当時スズキがこの新型車に託したのは、2シーター+マルチスペースというコンセプトだった。つまり4人乗りのファミリーカーとして考えたわけではなかった。ゆえに後席には、背もたれを倒すと座面が沈み込み、低くフラットに畳める凝った格納方式を採用する一方で、運転席側にはリアドアがない1+2ドアという個性的なボディ形状とした。
新型の発表会で、この再来と思わせる説明があった。センターピラーを太くし、前後のサイドウィンドーをはっきり分けたのは、パーソナルスペースと実用スペースを融合したデザインを表現したためと説明したのだ。言われてみれば、真横からの眺めは初代の1+2ドアを連想させるものだった。
横長のリアコンビネーションランプがバンパー上にあることも初代と似ている。初代はテールゲートの開口部を大きく取るためにこの造形としたものの、商用車っぽく見えるということで、2代目以降は縦長となってゲート両脇に移った。それが新型では再び、ゲートの開口幅を重視してこの位置に戻したのだ。
原点回帰する意味
ではなぜ、ワゴンRは原点回帰と思われる進化をしたのか。近年の軽自動車マーケットの状況が関係していると思われる。
いまの軽自動車の売れ筋はハイトワゴンだ。ダイハツ工業の「タント」や本田技研工業の「N-BOX」がベストセラー争いを繰り広げており、ワゴンRは脇役に甘んじている。スズキにも「スペーシア」というハイトワゴンがあるのだが、ベストセラー争いには加われていない。
そこでワゴンRは、これらの争いに加わるのではなく、パーソナル性の高いワゴンという独自性をアピールすることにした。それを強調するためにデザインを激変させたようだ。