近藤社長「山下氏は、はっきりモノを言う人物」と評価

近藤会長は、山下氏を次期社長に指名した理由として、「明るくて、生意気である点を評価した。はっきりとモノを言う人物であり、自分の意思を伝えてくる。長年見て、しっかりとした経営者になると感じていた。米国、英国に駐在し、リコーのほぼすべての領域を担当しており、そこで成果を出してきたことが大きい」とし、「私が、リコー全体の70%の売上高を担当していた大事業部長だったときに、英国を担当していた山下氏が、怒りのメールを送ってきたことがあった。デジタル複写機のオプションが数多くあり、現場が困っていたことを指摘するものであった。その後、工場において、顧客先仕様(コンフィグレーション)を行う仕組みを構築してくれた」といったエピソードを披露した。

リコーの近藤史朗会長

これに対して、山下次期社長は、「会社がよくないときには、誰かが言わなくてはいけない。だから、生意気ではない」としたほか、「今後は、人の話をよく聞くことに注意したい」などとした。

一方で、近藤社長は、「会長は、技術、事業、人の見極めが大切な仕事である。たくさんのエンジニア、社員の心の拠り所になるような仕事をしたい」などとした。

構造改革にメドついたタイミングで社長交代

都内で午後5時30分から行われた会見は、三浦社長が出席しない異例の形で行われたが、山下次期社長が「リーマンショック後の業績回復が進んでいない」と指摘したのに対して、「社長交代は、責任を取ったということではない」と近藤会長が説明。「三浦現社長は、2013年に社長に就任して以降、ビジュアルコミュニケーション、ITソリューションをはじめ、サービス事業の拡大に取り組み、プロダクションプリンティングおよび産業分野への本格的参入をリード。環境事業などの新規分野を拡大させ、新たな顧客価値を提供してきた。その一方で、オフィスにおける印刷ボリューム減少、社内外の経営環境の変化に備えた構造改革に着手。「その活動にも一定の目処がついたと判断し、来年度からスタートする第19次中期経営計画を新たな布陣で推進していくことにした」と語る。

また、「三浦社長は私と同い年であり、世代交代が必要だと考えた。経営のスピードをさらにあげていくことが必要であり、世代交代を早い時期にやらなくてはならないと考えた。交代には、タイミングがある。また、現体制の取り組みがひとつの節目を迎えたことでもある。新たな布陣で期待に応えたいと考えている」と述べた。

リコーは、2016年10月時点で、2017年3月期の業績見通しを下方修正しており、通期売上高は前年比9%減の2兆100億円、営業利益は61%減の400億円、当期純利益は同71%減の180億円の見通し。円高影響や景気減速などが影響。米国の複写機工場の閉鎖や、本社部門の人員削減などの構造改革に着手する方針を示していた。

三浦社長が経理畑出身であり、この4年間は、その視点からの改革に取り組んできたが、山下次期社長は、モノづくりの観点から改革に取り組むことになる。

3期連続の営業減益となるリコーは、新体制での反転攻勢が期待されるが、それに向けては、さらなる構造改革の実行に加えて、早急に新たな成長事業領域を創出する必要がある。また、山下次期社長が語るように、社員の意識改革も必要であろう。これまでの常識や前例にとらわれずに、リコーを再起動するという「山下改革」の実行が、どんなスピード感をもって実行されるのかに注目したい。