MVNOへの対抗策か

こうなると「今後もKDDIはMVNO対抗策を出すかもしれない」という考えが浮かぶ。しかし、KDDIの関連会社にはUQコミュニケーションズがあり、そこではMVNOの料金帯に近い割安な通信サービスとして「UQ mobile」を展開している。UQ mobileとの棲み分けはどうなるのかも気になるところだ。

これらに関して田中社長は「MVNOの領域に片足だけ入ったに過ぎない。MNOとして何ができるのかを学割を通じて究極のところまで踏み込んだだけ。当然、MVNOとガチンコで勝負することは考えていない。全体としてプラスになればいい」とコメントしている。現段階ではMVNOの対抗策ではなく、UQ mobileの領域にも、両足で踏み込むことはないというわけだ。

今回のニュースを巡ってはMVNOを強く意識したと報じるところもあるが、上記の田中社長のコメントどおり、その狙いは薄いと見られる。仮に意図があったとしても、手探り程度のものだろう。そもそも、昨年12月にビッグローブの買収も発表しており、KDDIはグループとして格安通信のMVNO(ビッグローブ)、KDDIのセカンドブランド的位置づけ(UQ mobile)というアセットがあり、それを崩すようなことは現実的には考えにくいからだ。

見せ方が際立つ

むしろ今回のニュースで注目すべきは、"月額2,980円から"という見せ方のうまさだ。先にも述べたとおり、複数の条件をクリアしなければこの料金にはならない。

「学割天国 U18」では18歳以下の人が新規契約を行うことで適用される。この段階で3GBまでなら月額5,390円となる。学割を適用せずに同様の条件(データ3GB利用時)だと 月額6,200円となり、多少のお得感は感じられるが、月額2,980円には程遠い。

実はあと2つほどハードルをクリアしなければ、月額2,980円にはならない。ひとつが家族の新規加入だ。これにより月額1,000円割引きが適用される。そして、固定通信の割引サービス「auスマートバリュー」を適用することでさらに月額1,410円が割り引かれ、月額2,980円からという料金が実現するのだ。

月額2,980円の学割ユーザーが増えると、足元は学割対象者からの収益は減るかもしれないが長期的に見てプラスに傾く。実質ゼロ円スマホの販売が禁じ手となって以降、新規加入者獲得の決定的な策がないのがKDDIの現状であり、固定通信の契約にいたれば、さらにユーザーの長期的な囲い込みにも成功するだろう。

今回の学割が機能すれば、KDDIにとっても収益面でプラスになる"究極の学割"になりえるが、ハードルの高さも目立つ。果たして効果のほどはどうだろうか。