毎年1月初めに米国ラスベガスで開催されるCES。コンシューマー・エレクトロニクス・ショーの名称で分かるように、本来は家電製品が主役だが、近年は自動車の姿が目立つ。なぜCESにクルマが出るようになったのか。今年のトレンドは何か。現地で感じたことを報告しよう。
自動車の電化が加速
世界でもっとも早く始まる展示会のひとつであるCES。米国でも日本でも「セス」と呼ばれるこの3文字を、最近になって目にした人もいるかもしれないが、実は今年で50周年を迎える歴史のあるイベントだ。
ただし、家電という広い範囲を対象にしたショーなので、時代によってトレンドが変わってきた。当初はテレビやレコードプレーヤーなどが中心だったが、1970年代になるとビデオデッキが登場し、1980年代には携帯電話が姿を現した。そして1990年代にはパソコンが登場。アナログからデジタルへと主流が移ってきたという流れだ。
ところが2010年代に入ると、自動車が目立つようになってきた。自動車と言えば、ガソリンや軽油を燃料とするエンジンで走る乗り物であり、家電とは言えない。それがこの数年で勢力を伸ばしてきた理由のひとつは、いろいろな部分で電化が進んでいるからだろう。
人とクルマの新たな関係性にも対応
自動車は以前から電気のお世話になってきた。ヘッドライトやワイパーなどは、電装系と呼ばれて欠かすことのできないパーツだ。それなのに、こういった電装品がCESに登場することはほとんどなかった。
自動車業界は国内外を問わず典型的なピラミッド構造で、メーカーが頂点におり、その下にサプライヤーがいくつも層を成しているという産業構造だった。電装品を作る会社もサプライヤーの1社。走りに直接関係しないヘッドライトやワイパーは、付属品という意識があった。
しかしそれが、21世紀を迎えて一変する。電気自動車に自動運転車と、クルマの基本的な走りの部分にまで電気が関わるようになってきたからだ。さらにコネクテッドカーやシェアモビリティなど、デジタル技術の進化によって、これまでにない人とクルマの付き合い方が生まれてもいる。