Memory - DDR4への移行はさらに加速
メモリに関しては、比較的順調にDDR4への推移が行われており、あまり特筆すべき話はないのだが、一応まとめておきたい。いつものように、IDFにおけるMemory Sessionのスライドを利用して紹介したい。
まずPhoto19は、主要なメモリに関してSpeedおよび容量に関するラフなロードマップである。2015年にはDDR4-2400がなかなか取れず、ほとんどがDDR4-2133のチップを利用して、後はオーバークロック動作でという感じで使われていたが、2016年になるとDDR4-2400の入手性がグンと良くなり、DDR4-2666もそれほど高値ではなくなってきている。
論より証拠で、例えばMicron子会社のCrucialでサーバー向けDDR4を検索すると、同一容量のDDR4-2133のRegistered DIMMとDDR4-2400のRegistered DIMMの価格が完全に一緒で、DDR4-2666のRegistered DIMMの値段もわずかに高い程度でしかない(Photo20)。つまりDDR4-2400がすでにSweet Spotに入っている事がここからも読み取れる。
一方で、Speedの方は? というと、DDR4-2933はほとんど見かけない(オーバークロックメモリもほぼDDR4-2666をベースにしている)が、2017年はDDR4-3200に行くであろうというのはメモリベンダー各社でおおむね一致するところである。
DDR4-3200は、1Xnm世代でなんとかなるかどうかというあたりだ。Samsungは2016年10月に、世界初の"10nm class"(10nm~19nm)プロセスを利用したLPDDR4-4266の出荷をアナウンスしており、SKHynixやMicronもこれに追従すると思われる。
この1Xnm世代は、まずはプレミア付き価格でも販売できるLPDDR4向けが最優先で、次がPC向けという事になるだろう。DDR4は現在20nmで生産されているが、2017年中にはこちらも1Xnmに移ることになると思われる。ちなみにSamsungがいう1Xnmは、18nmと推定されている。
もっともDDR4に関して2017年で考えると、オーバークロックは別にして、定格で使われる範囲ではDDR4-2666が最高速なので、DDR4-2933とかDDR4-3200を要求するアプリケーションそのものが存在しない。PCあるいはサーバー向けのメモリの定格がDDR4-2666を超えるのは早くても2018年なので、2017年はDDR4-2666の値段がDDR4-2400と同程度になる程度の動きに留まりそうだ。
もう少しマーケットを細かく見ると、IHSのデータによれば、今後はDDR4が急速に進展し、その分DDR3のシェアが縮小することになる(Photo21)。ただ分野別に見ると、サーバーがDDR4へもっとも早く、次いでノートPCが移行する。案外にDesktop向けには2017年末でもまだDDR3が残ると予測されている(Photo22)。
Memory - 16bit品はしばらく先
さて、そんな訳でDDR4が主流になり、また速度もそこそこに上がる一方で、容量に関してはちょっと横ばいになりそうだ(Photo23)。現時点で生産の中心は8Gbit品であるが、このあともそれが続く。16Gbit品は少なくともごく限られた形にしかなりそうにない。
理由は微細化がもはや容量を増やす方向に進展しないからである。例えば20nmが18nmになったとして、エリアサイズは21%しか小さくならないから、これで16Gbitを作ろうとすると8Gbit品の65%増しのダイサイズになる計算だ。これが許されるのはモバイル向けのLPDDR4とかで、標準品のDDR4では許容されない。
1Ynm(15~17nm)だと12.5%~44.5%増しで、ぎりぎりいけるかどうかというあたりだ。1Z世代(12nm前後)まで行かないと、容量を2倍にはできそうにない。問題はこの1Z世代が本当に実現可能かが危ぶまれていることだ。
DRAMメーカー各社は、とりあえず1Ynm世代までの目処は立っているようだが、これが2017年中に出てくるか微妙なところで、実際は2018年までずれ込む可能性もある。1Znmに至っては「2020年までに出せるかどうか」とかなり弱気の表現をするメーカーもある。実際、これを実現するだけの技術的難度が異様に高い。
もっともこの微細化は容量だけの問題ではなく、速度面での話もある。LPDDR4では4266Mbpsを実現しているが、こちらはLPDDR3からPrefetchのサイズを2倍にすることで実現しており、そのままDDR4に使えるわけではない。
そのため、DDR4の側はさらなるCellの高速化が必要と見られており、1Ynm世代でどこまでいけるかが鍵となっている。最終的にDDR4-4266をオーバーボルテージなしで実現しようとすると、1Znm世代でないと無理、という見方もあって、このあたりはまだ不明確となっている。
8Gbit超えについては、現行の6F^2から4F^2に構造を変更することで実現できる、という話は以前からずっと言われていることでもあるが、未だに実現していないのはこれも難度が高いからで、微細化とあわせて実現は難しそうである。
技術的な面を考えるとTSV(Through Silicon Via)を利用した3DS(3D Stacking)の方が確実性が高い。すでにSamsungは3DS DRAMの出荷を開始しており、他社も2017年中に追従すると思われる。
こちらはTSVを構築するための生産コストがまだ高いため、サーバー用の様な高価格が許容される用途のみの出荷であるが、Photo19にも出てきた通り128GB Module(2ダイのTSVチップを使ったもの)は出荷されており、2017年後半には256GB Module(4ダイのTSVチップを使ったもの)が出荷されそうである。
3D StackingはFlash Memoryの分野が先行しているが、こちらはダイを重ねるのではなく、ダイの中のMemory Cellを積層する形なので、この技術がそのままDRAMに応用できるわけではない。
ただ、当初は高価格だった3D積層NANDもいまでは量産効果が効いてかかなり安価に入手できるようになっており、TSVの構築に起因する高い生産コストも、3D NAND同様に数量が出れば改善が期待できると見る関係者は多い。用途は違うが、HBMとかMCDRAMなども原理は3DSと一緒であって、このあたりの量産技術は3DS DRAMにも応用できるから、あとは生産コストだけだ。
話を戻すとDDR4に関して言えば、2017年中は8Gbitチップ以上のものは出ないだろう。速度については、DDR4-3200が実現するのは1Ynm世代と見られており、現在の1Xnm世代ではDDR4-3200が実現できるのは一部のOverclockメモリに留まると思われる。
ただ価格そのものは緩やかに下がってゆくことが期待できる(Photo24)。もっともDDR4 DIMMの価格にこれがそのまま反映されるかというと、それは難しい。為替レートの変動の方がはるかに激しいので、長い目で見れば2017年末に向けて価格は下がってゆくと思われるが、短期的には結構上下しそうである。
Photo24:すでにDDR3の価格がDDR4を上回っており、この先も若干差は広がりそうだ。ちなみ一番価格が下落しそうなのがLPDDR4、というのは要するにそれだけいままでLPDDR4にプレミアが乗っていたということでもある |
Memory - DDR5は2020年の市場投入を見込む
最後にDDR5の話を。JEDECはDDR5の仕様策定を行っており、早ければ2016年中に最初の仕様が出せると言う話であったが、現時点で多少審議が難航しているのか、まだ公開されていない。
DDR5に関しては、以前RAMBUSが「基本はLRDIMMの延長になる」としており、実際2016年のIDFでSamsungやMicronが示したDDR5モジュールにもしっかりBufferが載っていた事を考えると、基本はLRDIMM方式で、あとは電気信号レベルをどうするかとなるだろう。信号全てにBufferを噛ます時点で、もう電気的にはどんなレベルでも問題なくなるわけで、実際にはかなり低い電圧を使うことを考慮しているようだ。
そのDDR5だが、市場に出てくるのは2020年ごろになりそうで、当面はまだロードマップにも現れない。Intelでいえば、例えば2017年に登場するPurely PlatformとかBasin Fallsは、少なくとも3年程度は使いたいだろう。実際どちらも、次の10nm世代のCannonlakeコアのCPUでも継続して利用されると見られているので、これが更新されるのは早くて2019年で、実際には2020年あたりになると見込まれている。