人気ゲームとのコラボレーションへ

そして誕生したのが「新選組」にまつわるお礼品だ。日野宿本陣のある同市は「新選組のふるさと」として知られ、ゆかりの地や「ひの新選組まつり」にはたくさんのファンが訪れるという。

同市はオリジナルの新選組グッズ(「新選組のふるさと日野 土方歳三セット/寄付額1万円)に加え、新選組をモチーフにした女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「薄桜鬼(※)」とのコラボレーション品をお礼として提供することを決めた。

「薄桜鬼(はくおうき)」
2008年に第1作が発売されたオトメイトによる恋愛アドベンチャーゲーム。"新選組"をモチーフとしつつ、鬼や吸血鬼などのファンタジー要素が組み込まれている。またゲームのみならず、TVアニメ、舞台、ミュージカル、イベント、コミック、そしてバラエティ豊かなグッズ展開も注目を集めている。(薄桜鬼 公式HPより)

石原主任「タイアップのきっかけは、お礼品の企画を考えていたときに若手職員から『薄桜鬼とコラボレーションをしてはどうか』という案が出たことです。同作とはもともと『ひの新選組まつり』などでコラボレーションを行ってきたことから、アイディアファクトリーさんにもご快諾いただき、このお礼が実現しました」

お礼品のイラスト。背景には「日野宿本陣」が描かれている。
(C)IDEA FACTORY/DESIGN FACTORY

ちなみに石原主任は過去に薄桜鬼の声優が参加するファンイベントに参加した経験があり、好きなキャラクターを応援する熱いファンに圧倒されたのだとか。

石原主任「日野宿本陣は、後に新選組局長となる近藤勇が剣術を教え、土方歳三、沖田総司らが出会った場所。『薄桜鬼』のファンの方にとっても聖地とも言える地です。そこで、キャラクターが日野宿本陣の前に並ぶ書き下ろしイラストのタペストリーを提供することにしました」

お礼品への反応は?

タペストリーが貰える寄付額は1万円。「タペストリーに1万円」とだけ聞くと割高に感じられるが、イラストは描き下ろしで、日野市にふるさと納税をしないと手に入らない。しかも、2,000円(自己負担)以外は控除されると考えると、ファンにとっては割安かもしれない。

アニメやゲームとのコラボレーションというと、人気作品「ガールズ & パンツァー」とタイアップして納税額が激増した茨城県大洗市が思い浮かぶが、日野市へのふるさと納税にはどれほどの効果があったのだろうか。

石原主任「ファンの方からたくさんの申し込みがあり、受付開始から3週間という短い期間で300件以上とかなりの件数が集まりました。また、申し込んでくださったファンの方から、作品や市政に対する熱いコメントもたくさん寄せられました。通常のふるさと納税では申し込んで終わり、ということが多いですが、納税者の方の声を聞けるのはとてもありがたいことだと思います」

キャラクターの背景に描かれている日野宿本陣

今後は「ひの新選組まつり」に絡めた体験型・企画型のお礼品づくりも進めていくという日野市。同市には「新選組のふるさと」「人気ゲームの舞台」という強みがあり、その要素をうまく使うことでPRに成功した。

今回は日野市の例を紹介したが、都内では「八王子産の野菜詰め合わせ」(八王子市/寄付額1万円)、「市役所でとれたはちみつ『きよはち』」(清瀬市/寄付額5,000円)、23区では「すみだ水族館年間パスポート引換券(大人2名分)」(墨田区/寄付額3万円)や「品川縣ビールセット」(品川区/寄付額3万円)など、各自治体がふるさと納税のお礼品に力を入れるようになりつつある。

しかしながら、「全ての地域にお礼品になりそうな特産品や特色があるとは限らない」と思う人もいるのではないだろうか。後編では、ふるさと納税の課題と合わせて専門家の見解を紹介する。