2016年も間もなく終わりを迎えようとしているが、毎年12月に最も注目が集まるのが実質2,000円の自己負担で好きな自治体に寄附をし、お礼品ももらえる「ふるさと納税」だ。控除額は1月から12月までの所得で決まるため、この時期に駆け込みで寄附をする人も非常に多い。
人気のふるさと納税、その現状とは
2015年には納税枠が約2倍になる特例控除額上限の引き上げや、確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」などが始まり、申請者数はうなぎのぼりだ。
総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(税額控除の実績等)」(2016年8月2日)によると、2015年度のふるさと納税額は341.1億円、2016年度は1,470億円に達している。
制度の普及に伴い浮上してきた問題が、お礼品競争の激化や自治体間の寄附金格差、そして首都圏や大都市からの大幅な税収流出だ。
「大都市に集中しているお金を地方に」というふるさと納税の制度の主旨とは合致しているものの、東京都では261.6億円、神奈川県では103.1億円、大阪府では85.9億円の住民税減収(2016年度課税における控除額)と、その額は看過できないレベルとなっている。特に個人住民税の流出の割合が大きい東京都の自治体では、どのような対策を行っているのだろうか。
流出額が1億円を超えた東京都日野市
東京都のほぼ中央に位置する日野市は、かつて甲州街道の「日野宿」が置かれた宿場町。新選組 (※)副長・土方歳三の出身地で、近藤勇ら新選組の主要人物が出会った地として知られている。
※「新撰組」と表記する場合もあるが、日野市では「新選組」表記を採用している。以下同
また、多摩の豊かな自然に囲まれた子育てのしやすい環境でありながら、新宿駅へ乗り換えなく行けるため都心部への通勤者も多い。東京都の中でも住みやすい街である日野市だが、一方で、都内の他自治体と同じくふるさと納税による住民税の流出が問題となっている。日野市役所企画部企画経営課企画係の石原収主任は次のように語る。
石原主任「制度自体が『地方の自治体を応援する 』という主旨のものであり、日野市だけでなく多摩エリアの周辺自治体も当初は様子を見ていたと思います。しかし、ここ1~2年でお礼品の競争が加熱して、住民の方が外の自治体に寄附する額が急増しています。実際、流出額は平成27(2015)年度が2,000万円台、平成28(2016)年度は1億円を超えるなど、看過できなくなったのです」
多額の流出に対して純粋な寄附額が年間総額で50万円を切った年もあり、対策の必要性を感じたと振り返る石原主任。そこで同市は2016年6月1日より、ふるさと納税のお礼品を設けて流出対策に取り組むことになったのだが、新たにどのようなお礼品にするべきか、という問題が浮上した。
石原主任「日野市のある多摩地区は都内では自然豊かなエリアなのですが、それを全国に対して売りにするにしてはどうしても弱い。また、お礼品の主流は魚や肉、米などの食品ですが、そのあたりも地方に比べると引きが弱いんです。そこでお礼品を『全国から見ていただける要素であり、宣伝材料である』と考え、そこから日野市をPRすることを考えました」