野菜は「そのままの形」が一番
――編集部で「野菜の保存について気になっていること」を聞いてきたのですが、まとめてお聞きしてもいいでしょうか
もちろんです。なんでも聞いてください。
――では……。「大根やカブの葉っぱは切って保存したほうがいい?」
う~ん、葉っぱを切らないと冷蔵庫に入らない、ということであれば切るしかありませんよね。ただ、大根やカブに限らず、野菜は「そのままの形」で保存するのが基本です。
――「そのままの形」で保存するのがいいのですね。いろんな質問があったのですが、それでほとんど解決してしまいました
もう少し詳しく説明しますと、水分を保持している部分が切断されると、そこを修復しようとして野菜が変化しようとしてまうんですよね。その分傷みやすくなるということです。
――なるほど。一応お聞きしますが、「白菜は芯を抜いて保存したほうがいい」「芯に切れ込みを入れるといい」というのは……
正直言って、都市伝説的なものだと思います。白菜の芯は、葉に栄養分や水分を送る部分ですので、芯があると白菜自体が成長していくんですよ。それを良しとするかどうかは人によって判断が分かれると思います。芯を取れば成長は止まりますが、葉の先端の水分はどんどん逃げていきます。
――半分にカットされたネギとか、ささがきにしたゴボウにも同じことが言えますよね
そうですね。原型よりも保存性が良くなることはないでしょう。ゴボウのような根菜は、日陰の涼しい場所で保存すれば冷蔵庫に入れる必要はありません。
「立てて保存」は効果薄?
――白菜やネギなどは「立てて保存するといい」と聞きますが、どうでしょうか
芯を残したまま横にして保存すると、葉が立ち上がるように成長していきますね。立てて保存すればそのエネルギーを抑えられるというのが通説のようですが、工場で栄養分を計測してみると、ほとんど変化はありませんでした。
――つまり、「立てて保存」も都市伝説という……
そういうことになりますね。というのも、収穫された野菜をすぐに冷蔵庫に入れるならまだしも、大体の野菜は流通の段階で寝っぱなしですよね。そんな野菜を冷蔵庫に入れた段階で立てて保存しても、あまり変化は見られないと思います。
――まとめると、「野菜はそのままの形で保存するのが一番」「水分が飛ばないように注意」「立てても寝かせてもそんなに変わらない」ということですね
そういうことです。
冷凍するとおいしくなる野菜って?
――今までは「常温」と「冷蔵」保存についてお聞きしましたが、「冷凍」についてはいかがでしょうか
冷凍保存は、もちろん保存性という意味では優秀です。しかし、一度凍らせることで氷が細胞を壊し、解凍後の食感が悪くなってしまいます。サラダや焼き野菜など、野菜そのものを味わう料理には向かないでしょう。
ゆでたブロッコリーなど調理済みの野菜を冷凍するとか、薬味用の刻みネギをとっておくとか、そうした使い方であれば便利です。
――そういえば、「シイタケは冷凍した方がおいしいと聞くが本当か」という質問が編集部からありました
シイタケに限らず、きのこ類は冷凍すると旨み成分が増えるようです。ただ、凍らせるとボソボソとした食感になってしまいますので、原型に近い形で食べる料理には向きません。スライスして炒め物の具にしたり、だしをとったりといった使い方がいいでしょう。
冷凍のポイントは「スピード」
――市販の冷凍野菜にも同じことが言えるのでしょうか
市販の冷凍野菜は業務用の冷凍庫で凍らせているのですが、家庭用とは次元が違うスピードで冷凍しているんですよね。素早く凍らせれば、細胞を壊す氷の結晶の大きさも小さくおさえることができ、食感や栄養のロスも少ないです。とはいえ、やはりとれたての野菜にはかないません。
――家庭用の冷凍庫でなるべくスピーディーに凍らせるにはどうすればいいですか?
アルミトレーを敷くといいでしょう。熱伝導率が高いので、冷気が素早く伝わります。当社の冷蔵庫にも搭載していますよ。
――なるほど。身近に代用できるものはあるでしょうか? アルミホイルとか
アルミホイルよりも、クッキーの缶などを使うほうがオススメです。アルミではなく鉄製が多いですが、冷蔵庫内のプラスチックやアルミホイルよりも熱を伝えやすいため、素早く凍らせることができると思います。
――冷蔵時には「原型に近い形」と「湿度」、冷凍時には「冷凍スピード」を意識することが大切なのですね。ありがとうございました