厳寒の候、年の瀬もいよいよ押し詰まり、読者諸賢におかれては風邪など引かれていないだろうか。筆者は引いている。風邪の治癒や予防にはビタミンが豊富な野菜をとるのがいいらしいが、買い込んだ生野菜は調理するタイミングを逸すると、冷蔵庫の中で目も当てられないことになっていることもしばしばだ。もうあんな思いは嫌だ。

そこで今回は、特に野菜の保存に力を入れて冷蔵庫を開発している日立アプライアンスに、冷蔵庫での上手な野菜の保存法を聞いてみた。今回話を聞いたのは、同社で冷蔵庫の商品企画を担当する南雲博文さんだ。

日立アプライアンス 商品戦略本部の南雲博文さん

冷蔵庫に入れないほうがいい野菜も?

――よろしくお願いします。今回は「冷蔵庫での上手な野菜の保存法」についてお聞きしたいのですが、そもそも冷蔵庫で保存しない方がいい野菜もあったりするのでしょうか
「冷蔵庫で保存しない方がいい」と言うと語弊があるかもしれませんが、「低温に弱い野菜」は存在します。ナス、キュウリ、オクラ、アスパラガス、ショウガ、ピーマン、ニンニクなどですね。ニンジンやタマネギなどの根菜類も同様です。

夏野菜や根菜には低温に弱い野菜が多い(写真はイメージ)

――そんなに! 夏野菜が多い印象ですね。それらの野菜は冷蔵庫に入れない方がいいわけですね
一概にそうとも言えないのが難しいところで、部屋の温度が高すぎてもよくないんです。新築マンションなど現代の住宅は高気密化しているので、キッチンも暖房で気温が高くなりやすいですよね。あまりにも部屋の温度が高い場合は、冷蔵庫の方が環境は良くなります。

日本家屋のように風通しのいい台所であれば、冷蔵庫ではなく常温の日陰で保存するほうが劣化を防ぐことができますよ。目安としては、醤油やみりんなどの調味料を常温で保管できるくらいの環境であればOKです。

――なるほど。他に注意すべき点はありますか?
切ってしまった野菜は傷みやすいので、種類にかかわらず冷蔵庫の野菜室に保存した方がいいですね。

また、野菜の保存性を高めるには「温度」だけでなく「湿度」も重要です。冷蔵庫内は低温なので、どうしても乾燥気味になってしまうんですよ。葉物の野菜がしおれてしまうのも、そうして水分が失われてしまうからなんです。

冷蔵庫保存のポイントは「湿度」

――ということは、野菜室の湿度を上げれば野菜が長持ちするということですね!
その通りです。当社の冷蔵庫の野菜室は「新鮮スリープ野菜室」といって、100%近い湿度を保っている上に「炭酸ガス」で植物の呼吸を……

冷蔵庫で1週間保存した小松菜。左は日立の最新冷蔵庫で十分な湿度を保ったもの、右は同社従来品で保存したもの。高い保存性のポイントは「湿度」と「炭酸ガス」だそうだ

――あ、その話はまた後で……。日立の冷蔵庫を持っていない人のために、庫内の湿度を高めるテクニックを教えてください
昔から言われていることですが、野菜を新聞紙でくるむといいですね。野菜から蒸散してしまう水分を適度にとどまらせることができます。ビニール袋で包むと、袋の内側に水滴がついてしまうのですが、新聞紙で包めば余分な水分は吸収してくれますからね。

ただ、当社の「新鮮スリープ野菜室」で同じことをすると、逆に新聞紙によって水分が奪われてしまいますので注意してほしいです。

――御社の冷蔵庫のすごさが伝わりました。ちなみに、一般的な冷蔵庫の野菜室はどれくらいの湿度なのでしょうか
昔の冷蔵庫は50%程度だったと思いますが、最近では80%以上の湿度保持ができる冷蔵庫が一般的だと思います。


ここまでをまとめると、根菜や一部の夏野菜など、低温に弱い野菜の保存性は「日陰の涼しい場所>冷蔵庫(野菜室)>気温の高い室内」の順に高い。一方、冷蔵庫で野菜を保存する場合は、新聞紙でくるむなどして「湿度を高く保つ」ということが重要なようだ。

次のページでは、「白菜は芯を抜いた方がいいの?」「野菜は立てて保存した方がいいの?」「シイタケは冷凍した方がおいしいの?」など、野菜の保存法にまつわる疑問を南雲さんにまとめてぶつけてみた。