新興国市場の開拓にも力を発揮

日本でのコースターの使われ方は、飲食店・ホテルでの送迎、企業・学校の通勤通学、商業施設・娯楽施設などの無料送迎、レンタカー、幼稚園バス、貸切チャーター(冠婚葬祭)、請負い輸送、地域コミュティバス、路線バス・ロケバスなどだ。ちなみにトヨタは、プリウスに先立ってコースターのハイブリッド車を投入している。今後、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)展開の可能性もある。

一方、海外マイクロバス市場だが、バス・トラックの台数統計がない国が多く、全世界の市場規模は不明。コースターの世界販売は累計55万台以上となり、2010年以降は増加傾向にある。トヨタは今後も需要の伸びが見込まれるとする。とくに中近東やアフリカの資源国で経済発展・購買力増加により需要が拡大している。また、日本からの中古マイクロバス輸出も増加している。

海外では、日本国内と異なり厳しい使われ方(長期間使用、砂漠・未舗装道路での使用、定員大幅超過、ルーフラックに大量の荷物)をされることが多いので、一般輸出用や香港、台湾、中国向け仕様など、それぞれの国の法規や使われ方にきめ細かく対応していかねばならない。

ライトバス以来の歴史、トヨタ車体の熱い想い

今回、コースターを24年ぶりにフルモデルチェンジしたトヨタCVカンパニーにあって、とくに熱い想いをもって新型車開発に取組んだのが前身のライトバス以来、車体製造を行なってきたトヨタ車体である。トヨタ車体は、2013年9月にコースター50周年の節目として「コースターわくわくプロジェクト」で初代車のレストアを完成させ、「コースター記念誌」を発行している。

このトヨタ車体のコースターわくわくプロジェクトは、当時50年前のコースターの原型となるライトバスが全国のミュージアムなどにも現存していなかったため、50周年記念として開発部門の力を集結し、コースターをレストア(復元再生)して現代に甦らせるというものだった。見事に復元された日本初の量産小型バスは、トヨタ車体の温故知新のものづくり技能の伝承ということで話題になった。

今回の新型コースターは、新たにトヨタ車体の製造子会社である岐阜車体岐阜本社工場に新製造ラインを設けて生産も一新した。

トヨタ車体が熱い想いを傾けるコースター

国内で圧倒的シェアを確保しつつ、海外の新興国で経済発展に寄与

マイクロバス市場は、トヨタ・日野連合軍に日本車では三菱ふそうと日産が競合しているが、海外では欧州系はセミボンネットバスが主流で、客先とニーズが異なるため競合は少ない。

中国製コピー車が中国から新興国などに輸出されてきているが、耐久性・信頼性で日本車の牙城は崩しきれていないのが現状だ。唯一、ライバルとなってきているのが韓・現代自動車の「カウンティ」である。現代自は、日本のマイクロバスの研究をここ数年、積極的に進め、中近東やアフリカの都市部で日本車と競合するようになってきている。韓国は現在、政治経済面で揺れているが、今後は乗用車に続き、この分野でも日本車に追いつき追い越せの方向性が強まりそうだ。

いずれにせよ、トヨタの新型コースターは、日本国内ばかりでなく、経済発展が著しい新興国でも生活を支える交通手段として定着していく。新興国においても安全法規の導入が進んでいるため、車齢が古いクルマやトラック架装のバスから、メーカー完成車に需要が移っていくことも推測される。トヨタの隠れたグローバル戦略車として、コースターの重要性がさらに高まりそうだ。