トヨタ自動車の2016年の掉尾を飾る新型車発表は、小型バスの「コースター」だった。トヨタは12月22日、コースターを実に24年ぶりにフルモデルチェンジして発表。定員24人から29人乗りのこのクラスのバスは、小型バスとかマイクロバスと呼ばれている。実はこのコースター、トヨタにとって“隠れた戦略車”とでも呼ぶべきクルマなのだ。
商用車分野の世界戦略車
トヨタは、25人程度の乗員が快適に乗ることができる小型バス需要の高まりを受け、1963年にライトバスを誕生させ、1969年のモデルチェンジを機にコースターと改称した。それ以来、コースターは50年以上も世界110以上の国や地域で乗り継がれている。
いわば、トヨタにとって乗用車に比べて地味ではあるが、このコースターは商用車(CV)分野での世界戦略車なのである。
今回の新型コースターは、1993年の3代目モデルから24年ぶりにボディを一新。環状骨格によるボディ剛性の向上、車両安定制御システム(VSC)を日本でクラス初採用し、さらに運転席と助手席に乗員保護補助装置(SRS)エアバッグを標準装備するなど、優れた安全性を獲得している。室内高と室内幅の拡大、静粛性の向上、フラットな乗り心地で、乗客がゆったり過ごせる室内空間も確保した。シンプルでスクエアなキャビンと力強いアンダーボディとの組み合わせにより、モダンかつ様々な環境で使用できるタフなイメージを予感させるスタイルを実現している。
コースターは、前身のライトバスから数えて50年以上と、トヨタでも有数の長寿命モデルになっている。すでにライトバスの時代から海外に輸出を展開しており、その使い勝手の良さから北米や欧州を除く世界の市場で受け入れられている。その競合車は、三菱ふそう「ローザ」、日産自動車「シビリアン」などが挙げられるが、世界戦略でのライバルは韓・現代自動車の「カウンティ」であり、とくに中近東やアフリカで競合しているのだ。
トヨタCVカンパニーはトヨタ車体と一体化、日野とも連動強化
トヨタは2015年4月から製品軸で7つのカンパニーを設立したが、その1つが「CVカンパニー」だ。トヨタの最初の開発車が「トヨタG1トラック」だったように、CVはトヨタの原点でもある。増井敬二CVカンパニー・プレジデント(トヨタ専務役員兼トヨタ車体社長)は、CVカンパニーのミッションを「世界各地の生活を支え続ける『もっといいCVづくり』と、トヨタの屋台骨として競争力を強化し『地盤をしっかり固める』こと」とする。
つまり、トヨタはCVカンパニー体制でグループのトヨタ車体と一体化し、かつ日野自動車とも従来以上に連携してトヨタCVグローバル戦略の強化に乗り出したのだ。24年ぶりの新型コースターは、その第1弾ということなのだ。