スポーツ用イヤホンの枠を超えて

BE Sport3のパッケージを開梱すると、スタビライザーなしでSpinFitイヤーチップが取り付けられた状態のハウジングが目に入る。この状態でも楽しめるが、スポーツ用途を抜きにしてもスタビライザーを付けたほうが安定感があり、歩いているときもズレにくい。イヤーチップともども、利用開始前に付け替えたほうがいいだろう。

イヤーチップはS/M/Lの3サイズ、2層式TwinBladeタイプはMサイズのみが付属する。イヤーチップのカラーバリエーションは本体色 (ブラックまたはローズゴールド) により異なるため、どちらが自分の好みか購入前に吟味しておきたい。

2層式TwinBladeイヤーチップとスタビライザーの効果により、激しく運動してもズレを感じない

筆者おきまりのランニングコースへ、iPhone 7とのペアリングを完了させて出たみたが、数キロ走ったあとでも特段ズレを感じない。スタビライザーの効果もあるだろうが、想像以上にスキがない2層式TwinBladeイヤーチップによるところが大きそうだ。左右のハウジングをつなぐDuPont社製ケブラー/バリスティック素材のケーブルはフラットで、タッチノイズも気にならない。

密閉性は高く音漏れの心配はないが、外部の音はほどほどに入ってくる。走っているとき、後ろから近づいてきた自転車にベルを鳴らされたものの、すぐに気付くことができた。安全を考えると、利用場所を吟味したうえでなお音量を控え目にしなければならないが、密閉性の高さゆえに周囲の音に気付かないということはない。

BE Sport3のコントロール部。USB Micro-B端子を差し込めば約2.5時間でフル充電できる

気になる音質だが、こちらはスポーツ用イヤホンの枠を明らかに超えている。搭載された6mmダイナミック型ドライバーの素質もさることながら、アルミ製ハウジングの採用が奏功してか、音の輪郭が明瞭かつソリッドに描かれる。全体としてフラット傾向の音づくりだが、中高音域に伸びを感じるのはSpinFitの特性が手伝ってのことだろう。

むしろ驚きは低音域の描写力で、ベースやバスドラの音がしっかり沈みこむ。イヤーチップを通常のSpinFitと交換するとわかるが、これは2層式TwinBladeイヤーチップの効果によるところが大きい。この部分だけを見ても、スポーツ用イヤホンという先入観を持たずに評価されるべき製品といえる。

複数のコーデックに対応したメリットも見逃せない。2010年秋以降に発売されたMacは標準でaptXをサポートするため、BE Sport3をMacBook Air (Mid 2013)とペアリングし、iPhone 7と同じ楽曲を再生してみたところ、高音域の印象に違いを覚えた。ライブ音源の音場の広がりもアコースティックギターの胴鳴りも、aptXのほうがより立体的でリアルに感じられるのだ。なお、最大8台のマルチペアリングに対応しているため、PCとスマートフォンの使い分けは容易だ。

現行のMacとはaptXで接続されるため、同じ曲でもiPhoneとの音質差がはっきり現れる

気になった点としては、コントローラの位置が挙げられる。ハウジングから約8cmと近く、走ると首に当たることがある。季節柄ランニング時は襟のあるウェアを着用したため、それほど気にならなかったものの、薄着の時期はどうだろう。現在でもケーブル長は調整できるが、コントローラの位置も調整できればベストだ。

さらにいえば、2層式TwinBladeイヤーチップも複数同梱してほしかったが、専用設計品であるだけに、数を増やせば価格の上昇につながりかねない。市場価格1万円前後という抜群のコストパフォーマンスを思うと、やむをえないところだろうか。

このように、軽さや防塵/防水性能などスポーツ用イヤホンとしての基本スペックを満たしつつ、音へのこだわりというオーディオブランドの矜恃を持つBE Sport3。デザイン性も高く、イヤーチップとスタビライザーを交換すれば、スポーツ用らしからぬ落ち着いた雰囲気で使うこともできる。続々と新製品が予定されているOptoma / NuForceの音作りを感じさせるという点でも、注目に値するBluetoothイヤホンといえるだろう。

付属のキャリングポーチ。ネオプレーン素材で撥水性があり、カラビナも付いている

キャリングポーチの内側。起毛素材が使われるなど、こだわりが感じられる