何らかの目の疾患が飛蚊症を引き起こしている症例もある

視野に黒い点や虫のようなものが見える症状・飛蚊症(ひぶんしょう)は、一般的に加齢などに伴う生理的現象が原因であるケースが大半だ。ただ、中には思いもよらない重篤な疾病がその背景に隠れている場合も少なからずある。

今回はあまきクリニック院長の味木幸医師に病気が原因の飛蚊症「病的飛蚊症」ついてうかがった。

病的飛蚊症になる確率は2割程度

飛蚊症は真っ白な原稿用紙のように背景がクリアな物・場所を見た際、視界に何らかの物体が現れる症状を指す。視界内の浮遊物は視線の動きからやや遅れて現れ、その形や色も人によって個人差がある。

全体の飛蚊症のうち、8割程度は目の中の「硝子体(しょうしたい)」と呼ばれる場所が経年劣化し、濁ってきたことに伴う「生理的飛蚊症」が原因とされている。だが、残りの2割程度は何らかの疾患が原因となり、体がSOSを出してきた結果、飛蚊症の症状が現れていることになる。

病的飛蚊症の原因は「後部硝子体剥離」「網膜裂孔」「網膜剥離」「硝子体出血」「ぶどう膜炎」など。これらの原因が複合的に絡み合っているケースもあるが、それぞれを簡単に紹介しよう。

後部硝子体剥離

ゼリー状の硝子体の組織が壊れだすと硝子体全体が収縮し、網膜との接着部分から次第に剥(は)がれ落ちてくるようになる。これが後部硝子体剥離で、後述の硝子体出血や網膜裂孔につながる。

20歳前後までは成長に伴って目が大きくなるため、硝子体も周りの眼球の形を保つ役割を担う。だが40代以降になり、「縁の下の力持ち」的な役目を終えると、物理的になくてもよくなってしまい、網膜から剥がれ落ちてしまうという。そのため、一般的に後部硝子体剥離は40代や50代によくみられる。

味木医師は「後部硝子体剥離は患者が気づかない間に起きていて、ある日突然に飛蚊症につながることも多いです。経験上、1カ月ほどかけて後部硝子体剥離の症状が完成するのではないかと考えています」と話す。